2020年まで続いたドル安基調に変化の兆しがみられる。QUICKと日経ヴェリタスが外国為替市場関係者に実施した2月の共同調査で、ドル安基調に変化が起きているかを聞いたところ、「ドル高に転じた」が41%、「依然としてドル安基調」が46%と見方が割れた。米長期金利の上昇や景気回復への期待を背景にドル高に転じたとみる市場関係者が増えているようだ。
外為市場の対ドルの円相場は2月15日時点で1ドル=105円前後と103円台前半だった昨年末よりも「円安・ドル高」が進む。足元のドル高基調に加え、ドル高転換の見立てが増えた背景には、米長期金利の上昇がある。
「米10年債利回りが1%台になり、一方的なドル安を放置できない状況。行き過ぎたドル安の調整局面だ」。三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストはこうみる。調査でも、ドル高に転じる理由として「米長期金利の上昇」を挙げた割合は5割強に上った。
新型コロナへの対策により米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和は長期化し、積極的な財政出動で財政赤字も膨らみそうだ。瀬良氏は「FRBの緩和縮小(テーパリング)は長期金利の上昇圧力になるが、実際の行動はだいぶ先」と予想する。
ユーロの見通しについてもユーロ高(46%)、ユーロ安(42%)で割れた。ユーロ圏の独自材料より、ドルの動向に左右されるとの見方が多い。
新興国通貨の方向感もばらつきが目立つ。最も上昇を見込む通貨は、過半が「中国人民元」と回答。住友商事グローバルリサーチの鈴木将之シニアエコノミストは「景気回復が早く、米国による対中政策も悪化しないとみられ、一番収益を見込める」と話している。
調査は2月8~10日に実施。金融機関や事業会社の外為市場関係者80人が回答した。
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。