【日経QUICKニュース(NQN) 中山桂一】国内で新型コロナウイルスの感染者数が急拡大している。21日には全国で過去最多の18万6246人の新規感染者が確認された。今のところ日本の株式相場には過度な重荷にはならないとの見方が多いが、リオープン(経済再開)関連株には短期的な逆風になる可能性がある。
■3連休明けの予兆
「海の日」を含む3連休明けの19日。NTTドコモから固定電話につながりにくくなる事象が発生した。多くの利用者の電話が通じず、SNS(交流サイト)には「ドコモから何の発表もない」「回線障害ではないか」といった書き込みがあふれた。
株式市場のある関係者は「発熱外来や相談センターへの電話が相次いだことが原因ではないか」と推測した。コロナ禍第7波急拡大の予兆だった可能性がある。東京都の発熱相談センターへの相談件数は19日に1万5000件を超えた。公表されている2020年10月末以来では最多だった。
同日の事象についてNTTドコモは「ドコモからNTT東日本向けの回線が混み合った」と述べ、回線障害を否定した。NTT東は「携帯電話から固定電話への通話が増え、110番など緊急回線を優先するため自動制御がかかった」と説明した。NTT東によると21年5月に、コロナワクチンの電話受け付けが始まった際にも自動的な制御の措置が起きたという。
■全体への影響は限定か、厳しいシナリオも
感染者の拡大は予兆から現実となった。これについてニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「日本株全体への影響は限られるだろう」とみる。「長い目でみればインバウンド需要、国民の旅行需要が見込まれる点は変わらない」
だが、井出氏は「自粛ムードが強まると旅行関連やインバウンド関連には逆風。コロナ拡大が長期化すれば日本への入国者数の上限2万人の引き上げが遅れて、関連株には業績や株価の重荷となる」とも指摘する。21日にはANAホールディングス(9202)、KNT―CTホールディングス(9726)といった空運や旅行関連株が下げた。
大和総研は20日、実質国内総生産(GDP)見通しを改訂した。コロナ感染状況に左右されると断りながら、7~9月期は行動制限が回避されるというメインシナリオを描く。実質GDPは前期比年率で6.8%増を見込む。従来の7.5%増から下方修正したものの、現時点では旅行需要の発現によりサービス消費の回復が追い風となるとみる。
メインシナリオとは別に「行動制限シナリオ」と「中国ロックダウン(都市封鎖)シナリオ」も明らかにした。前者は8月中にまん延防止等重点措置が適用され、8~9月の人出が1~2月と同程度まで減少すると想定。自動車の減産幅も拡大するとの前提を置いて、7~9月期の実質GDPは3.8%増となると予想する。神田慶司シニアエコノミストは「まん延防止等重点措置の発令や自治体の動向により経済活動が左右される」と指摘する。
後者のシナリオは、国内の行動制限に加えて、中国での広範囲かつ長期的なロックダウンが続くという、より厳しい想定だ。日本から中国向けの輸出が減少し、自動車などの部品調達も停滞する。この場合、7~9月期の実質GDPは前期比年率で0.8%増まで伸び悩む。
株式市場では急速なコロナ感染者の増加への警戒が台頭する一方で、「焦点は重症者数が増えるかどうかではないか」(国内投信)と冷静な声も混在する。いつ感染拡大がピークをつけるか、いまは静かに見守る段階だろう。