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大量保有報告書とは?どこで確認?報告義務や5%ルールの内容、株価への影響を解説!

記事公開日 2022/8/18 18:00 最終更新日 2022/8/18 18:00 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 大量保有報告 金融コラム

【QUICK Money World 荒木 朋】株価は企業業績や景気動向など様々な要因で動きますが、株価の上げ下げを決めるのは株式の需給バランスです。買いたい投資家が多ければ株価は上がりますし、売りたい投資家が多ければ株価は下がります。その需給バランスに影響を及ぼす要因の1つに「大量保有報告書」があります。大量保有報告書とは何か?という基本的なことから大量保有報告書の見方や確認すべき箇所、大量保有報告書と株価の関係などについて分かりやすく解説していきたいと思います。

大量保有報告書とは?

大量保有報告書とは、上場企業の株式等について発行済み株式数の5%以上を取得した株主が報告・公表しなければならない書類のことをいいます。ある上場企業の株式の保有割合が5%を超えた場合、5%を超えた日から土日祝日を除く5日以内に大量保有報告書を内閣総理大臣(財務局)に提出する義務があり、この制度を通称「5%ルール」と呼んでいます。

大量保有報告書には、発行済み株式数の5%以上を保有した際に提出する「大量保有報告書」に加え、大量保有者となった日以降に保有割合が1%以上増減した場合や大量保有報告書に記載すべき重要事項に変更があった場合などに提出する「変更報告書」、大量保有報告書または変更報告書の記載に誤りがあったり、不十分だったりする場合に提出する「訂正報告書」の3種類があります。

大量保有報告書の種類

先に、株価の上げ下げは、買いたい投資家と売りたい投資家の需給バランスによって決まると説明しましたが、需給バランスの変動要因の1つになるのが大量保有報告書です。3種類のうち、特に①大量保有報告書、②変更報告書――の2つが重要な書類になります。

上場企業の発行済み株式数の5%以上を保有するような投資家は、国内外の機関投資家などのいわゆる大口投資家であるケースが多く、大口投資家の保有状況が需給バランスに変化を生じさせるきっかけになり得るためです。中小型銘柄には著名な個人投資家が5%以上を保有する大株主に浮上し、株式の需給バランスに大きな影響を及ぼすケースもあります。

 

大量保有報告書と株価は関係性がある?

大量保有報告書と株価にはどのような関係があるでしょうか。大量保有報告書で、国内や海外の有力機関投資家や著名投資家が上場企業の株式を5%以上保有したと報告したり、5%以上を保有していた投資家が変更報告書で「保有割合が増えた」と報告したりした場合、その企業の株価にはプラス要因に働くことが考えられます。

大量保有報告書には保有目的が記載されていますが、機関投資家は「純投資」や「投資一任契約に基づき運用するための保有」といった記載が多くみられます。これは、機関投資家が財務状況や業績を基に企業の本質的な価値を測るファンダメンタルズ分析を行った結果、将来の値上がりが期待できるとしてその企業の株式を保有していることにほかなりません。言い換えれば、いわゆるプロ投資家による徹底的な分析により、将来の株価上昇が期待できるとのお墨付きを得た銘柄と考えられます。そのため、個人などほかの投資家の買いも集まりやすく、株価は上昇する可能性が高くなるというわけです。

コンサルティングサービスを手掛けるベイカレント・コンサルティング(6532)のケースをみてみましょう。

2016年9月に上場したベイカレントには現在、国内外の多くの機関投資家が5%ルールの対象となり、大量保有報告書を提出していますが、保有割合の大きさで顕著なのが資産運用世界大手の米キャピタル・グループ傘下の運用会社キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメント・カンパニーおよび共同保有者(以下、米キャピタル・リサーチ)による大量保有です。

米キャピタル・リサーチがベイカレント株の大量保有報告書(5%以上の保有)を初めて提出したのが20年8月。その後も基本、保有割合を増やし続けて、22年3月には保有割合が20%を超えました。20年8月末に1万円台だったベイカレント株は米キャピタル・リサーチの買い増しに歩調を合わせるように上昇気流に乗り、業績も順調に拡大する中で22年に入って株価は一時5万円台を付けました。

米キャピタルリサーチのベイカレントの大量保有と株価推移

このように、機関投資家が大量に保有割合を増やした場合、株式の需給面で大きなプラス材料になる可能性が高いといえます。ただし、株価が大きく値上がりした後は、機関投資家も利益確定目的で保有割合を減らす(売却する)可能性がある点には注意が必要で、その場合は一転して株価にはマイナス要因として意識されることになります。

変更報告書では「保有割合が1%以上増減した場合」に提出する義務が生じますが、保有割合が1%以上減少していることが分かった場合、これまで買いを入れていた機関投資家が株価のさらなる上昇余地は乏しいとみて利益確定に動き、その後も大量に株式を売っている可能性もあります。また、大口投資家の保有割合が減った場合、その企業が業績面などで何らかの問題を抱えていると警戒して売りを出している可能性も考えられます。大口投資家の姿勢が反転した場合は何かその企業で懸念されている材料はないかチェックするといいでしょう。

このほか、証券会社が「商品在庫確保」や「貸借取引」を保有目的とする大量保有報告書や変更報告書を提出する場合があります。これは証券会社が買い集めた株式が投資家に貸し出され、空売りされるケースが考えられます。空売りは株価の下押し圧力を強める(逆に買い戻しのタイミングでは押し上げ圧力を強める)一因にもなるため、証券会社が大量保有報告書・変更報告書を提出した場合は保有目的を忘れずにチェックするようにしましょう。

経営トップの保有状況にも注意

また、中小型銘柄に分類される企業では経営トップが多くの株式を保有する大株主であるケースが多くみられますが、その経営トップが保有割合を減らしたことが大量保有報告で判明した場合も注意が必要です。企業経営を主導するトップが自社株を売却した場合、経営上の問題が何かあるのではないかと投資家が警戒し、それが思わぬ株安につながる場合があるためです。

こうした思惑で株価が乱高下した例としてセキュリティーサービスを手掛けるブロードバンドセキュリティ(4398)のケースが挙げられます。2020年5月20日、当時の代表取締役社長による変更報告書が提出され、保有割合が1%以上減っていることが明らかになりました。それを受けて、翌営業日(20年5月21日)の株価は一時13%超の急落を記録しました。経営トップの自社株売却で警戒感を強めた投資家の売りが殺到したのです。

同社はその後、20年5月25日に「代表取締役社長が持ち株について、今後2年間は一切売却および貸株を行わない旨の宣誓書を提出した」とのリリースを公表すると、一転して同日の株価は急上昇し、一時は2割以上の上昇率を記録しました。

これまでみてきた通り、大量保有報告書は対象企業の株価に及ぼす影響が決して無視できない材料であることが分かりました。特に大量保有報告書および変更報告書の提出者とその内容、保有割合の増減の有無、保有目的などについてくまなくチェックし、企業の経営状況や株価動向を先読みする1つの判断材料として活用するといいでしょう。

大量保有報告を知る方法とは?

大量保有報告書は株価にも影響を及ぼし得る重要な材料の1つですが、大量保有報告書は企業のHP内のIRサイトや、企業が一般投資家に向けて適時・適切に公表する「適時開示情報」では確認できない点には注意が必要です。

内容を閲覧するには、基本、金融庁が管理する電子開示システム「EDINET」を利用する必要があります。ただし、金融情報プラットフォームや専用アプリでも大量保有報告に関する情報・ニュースを収集・配信しており、それを活用すれば大量保有報告の情報をいち早く入手し、適宜チェックすることができます。

「QUICK Money World」では企業開示情報のタブで「大量保有報告」のキーワードで検索すれば閲覧することができます。また、マーケット予想から企業分析まで最大限活用したい方は有料会員になってみてはいかがでしょうか。有料会員の方には大量保有報告などの企業情報や開示情報、プレスリリースをメールで通知します。メールアドレスの登録だけでなく、GoogleアカウントやApple ID等でも登録できます。

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大量保有報告書を提出する理由は?

大量保有報告書(5%ルール報告)は、該当した投資家の保有割合が5%を超えた日から、土日祝日を除いた5日以内に提出する義務が生じます。その理由について、金融庁・財務局は「5%ルールの目的は、株価に影響を及ぼしやすい大量保有の情報を公開させて、市場の公正性、透明性を高めるとともに、投資者の保護を一層徹底することにある」と説明しています。企業の株式を大量に取得した場合、株価が乱高下することが多くみられるといい、「こうした事実に関する十分な情報を持たない一般投資家が不測の損害を被るおそれ」(財務局)を避けるため、5%ルールを制度化・義務化したというわけです。

大量保有報告書を提出する対象者は?

大量保有報告書を提出する義務があるのは、発行済み株式数に占める保有割合が5%を超えた株主ですが、ここでいう株主(保有者)は以下のような株主が該当します。

  • 自己又は他人の名義をもって株券等を所有する者
  • 売買その他の契約に基づき株券等の引渡請求権を有する者
  • 当該発行者の事業活動を支配する目的を有する者
  • 株券等に投資をするのに必要な権限を有する者

また、5%ルールでは、本人による保有のみではなく、本人と共同して株式等の買い付けを行うことに同意しているような株主(=共同保有者)も対象となります。夫婦や50%超の資本関係がある親子会社・兄弟会社(=みなし共同保有者)なども同様です。

因みに、先の「大量保有報告書と株価の関係」の項目で取りあげたベイカレント・コンサルティングの例では、筆頭提出者である米キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメント・カンパニーと共同保有者3社の計4社の保有割合が合算されたものでした。

大量保有報告書を提出する方法は?

大量保有報告(5%ルール)に該当した当事者が大量保有報告書を提出する方法は現在、金融庁が管理する電子開示システム「EDINET」を利用することが必須となっており、インターネット経由で報告書を提出することが義務付けられています。そのため、書面による報告書の提出はできなくなっています。

 

大量保有報告書を提出しなかった場合の課徴金はいくら?

大量保有報告書は、発行済み株式数の5%以上を保有した場合や保有割合が1%以上増減した場合に、土日祝日を除く5日以内に提出することが義務付けられていますが、仮に提出期限までに提出しなかった場合は課徴金の対象となります。課徴金の額は「大量保有報告の対象となった株券等の時価総額の10万分の1」(金融庁)とされています。違反行為を繰り返したりした場合には課徴金を加算する制度も設けられているようです。

まとめ

大量保有報告書とは、上場企業の株式等について発行済み株式数の5%以上を取得したり、5%以上を取得した後の保有割合が1%以上増減したりした場合、土日祝日を除く5日以内に提出しなければならない書類のことです。発行済み株式の5%以上を保有するのは国内外の機関投資家などいわゆるプロ投資家と呼ばれる大口投資家のケースが多く、その投資家の保有割合の増減は株価の変動要因として影響を及ぼします。

大量保有報告(5%ルール)の情報は、「QUICK Money World」などの金融情報プラットフォームや専用アプリでも入手が可能です。こうしたコンテンツを活用することで気になる企業の提出情報をいち早く確認し、今後の投資の立ち回りを考える一助にしてみてはいかがでしょうか。

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著者名

QUICK Money World 荒木 朋

1998年にQUICKに入社。2003年から11年間、日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)で記者職に就く。0609年にNQNニューヨーク支局に駐在。1820年はQUICKロンドン支店に赴任。08年のリーマンショック、20年のBrexitはいずれも現地で取材した。QUICK退社後、ボクシングトレーナーとして働く傍ら、21年から「QUICK Money World」に寄稿。


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