【QUICK Market Eyes 大野 弘貴】10日の米株式相場は消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回ったことで急騰した。アジア市場でもムードは明るいが今後については見方が分かれている。
■インフレ鈍化で年末ラリーへの期待高まる
IGのシニア・マーケットアナリスト、ジョシュ・マホニー氏は今後について以下の見解を示した。
「米消費者物価指数(CPI)はヘッドライン・コアの両方が鈍化した。エネルギー以外のインフレ鈍化は市場に歓迎の一撃を与えた。また、ダラス連銀のローガン総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁がそろって米連邦準備理事会(FRB)が積極的な利上げの減速時期に近づいていると言及したことも、CPI鈍化を強調する結果となった」
「この利上げ減速が株価の上昇を長期的に持続させるために十分かどうかは、まだはっきりとしない。ただ、今日のCPIの結果は、投資家の年末ラリーへの期待を高めるものであることは確かだ」
「ユーロ圏のCPIは10.7%と、欧米のCPIに顕著なかい離がみられる。それでも、米ドルの下落は米国からの輸入コストを押し下げるといった点から、欧州に希望をもたらすものである」
「センチメントの改善が続く可能性がある一方、長引く景気減速やそれでも高水準なインフレ率を考えると、市場の回復を阻害するハードルはたくさん存在する」
■10月のCPI鈍化だけではゲームチェンジャーにはならない=HSBC
HSBCは10日付リポートで、10月の米CPIはハト派的な結果となったが、ゲームチェンジャーにはならないとの見方を示した。前月に発表された9月の米CPIは、市場予想を上回ったことでその後に債券利回りが急騰。ただ、その動きは月末までに完全に巻き戻された事例を引用し、今月は逆の動きが生じる可能性があると指摘した。
CPIを移動平均でみると、10月分の鈍化に長期平均はほどんど影響を受けておらず、米連邦準備理事会(FRB)のシナリオを大きく変えるには更なるダウンサイドサプライズが必要であるとの見方が示されている。10月の米CPIが前月比で0.4%、コアCPIで同0.3%の上昇となったが、これは年率換算でそれぞれ4.9%、3.7%の伸びとなるとも解説した。