投資信託をめぐるマネーの流れに変化の兆しが見られる。これまで資産形成層を中心にコストが安いインデックス型(指数連動型)の投信が人気で、その中でも米国株のみに投資するタイプに資金が多く集まっていた。ところが、5月は全世界株に分散投資するファンドがそれを追い抜く逆転劇が起きた。
国内公募の追加型株式投資信託(上場投資信託=ETF、DC・ラップ・SMA専用を除く)を対象に、個別ファンドの5月の資金流入額(推計値)をランキングしたところ、4月に2位だった三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が5位に順位を下げた。同ファンドは3月まで7カ月連続でトップだった。
一方、業界最安水準の運用コストをめざす同じ「eMAXIS Slim」シリーズのうち、「全世界株式(オール・カントリー)」は4月と変わらず3位を維持した。同ファンドは日本を含む先進国および新興国の株式に投資する。5月の資金流入額(推計値)は389億円と、「S&P500」の316億円を上回った。通称「オルカン」と呼ばれるこのファンドが2018年10月に設定されて以来、月次の資金流入額で「S&P500」を超えるのは今回が初めて。
「オルカン」は純資産総額(残高)も増加傾向にある。ETFを除く投信全体で残高首位の「S&P500」(5月末時点で2兆1127億円)には及ばないが、「オルカン」(同1兆1027億円)も4月の4位から5月は3位に順位を上げた。月末ベースでトップ3に入るのは初めてとなる。
これまで運用成績が好調な米国株ファンドに集中投資する個人投資家が増えていたが、足元ではほかの地域に分散する動きが広がり始めているとみられる。