【NQNロンドン=菊池亜矢】発電設備などを手掛ける独シーメンス・エナジー株が大幅安となっている。フランクフルト株式市場で23日、前営業日比37%安と暴落。26日も下げが続き終値は2%安の14.35ユーロと、2022年11月以来の安値だった。22日に業績不振のスペイン子会社を巡り巨額の費用が発生する可能性があるとして、2023年9月期通期の利益見通しを取り下げたことで先行きの不透明感が高まっている。
シーメンス・エナジーは22日、23年9月期通期の利益見通しを取り下げると発表した。風力タービン製造や風力発電所の開発・運転などを手掛ける子会社のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(SGRE、スペイン)のタービン部品の一部で故障率が大幅に上昇するなどの品質問題から技術的な検査を進めた結果、想定より大きい費用が発生する可能性があると分かったという。
同社は「潜在的な品質関連対策とそれに関連する費用は現在評価中だが、10億ユーロを超える可能性がある」とした。SGREの利益見通しを撤回し、シーメンス・エナジーの利益見通しも取り下げることになった。5月時点では、「特別項目を除く売上高総利益率が1~3%の下限近くになりそうだ」としていた。
SGREの22年9月期通期の売上高は、前の期比4%減の98億1400万ユーロで、シーメンス・エナジーの売上高(同2%増の289億9700万ユーロ)の3割強を占める。純損益は9億4000万ユーロの赤字と3期連続の赤字。新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻などによるサプライチェーン(供給網)の混乱のほか、原材料や物流の価格上昇による費用増が利益を圧迫した。製品の故障や修理に関連した追加費用が発生したことも重荷だった。
かねて風力タービンの品質に懸念が出ていたなか、23日の電話説明会でシーメンス・エナジーのクリスチャン・ブルッフ最高経営責任者(CEO)は「品質問題は我々がこれまで認識していた範囲を超えている」と問題の深刻さを明らかにした。さらにマリア・フェラーロ最高財務責任者(CFO)は、この問題によるキャッシュフローなど財務への影響が「今後5年間」に及ぶ可能性を指摘した。
市場では「経営陣が現段階で財務に影響する潜在的な規模を適切に把握できていないことは当然気がかりだが、バランスシートへの懸念が再燃する可能性がある」(ドイツ銀行)との指摘があり、増資の検討が必要になってくるとの見方が浮上する。シーメンス・エナジーは「生産性の向上が以前の想定ほど実現しておらず、洋上風力発電では引き続き課題が増えている」としている。
国際団体の世界風力会議(GWEC)のまとめによると、シーメンス・ガメサは21年に新規設置された風力タービンの世界シェアが9.7%。デンマークのベスタス、中国のゴールドウインドに次ぐ3位だった。洋上風力を中心に成長市場と位置づけられていた分野で大きくつまずいた。足元では市場シェアを失う可能性も警戒されており、株価が持ち直すきっかけが見えなくなっている。