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テイラー・スウィフトの経済効果とは?物価の押し上げ要因に、関連銘柄も確認【米株キーワード】

【NQNニューヨーク=稲場三奈】世相を映す流行語。米国の株式市場でも、市場参加者が使うはやり言葉がある。そこからは、米国経済のトレンドや課題がうかびあがる。「米株キーワード」では、話題の言葉を読み解きながら、関連する銘柄の動向を取り上げる。

「彼女の動向を話題にするのは、政治や天気の話をするようなものだ。すなわち、文脈を必要としないほど、広く話題になる言葉ということだ」。米タイム誌は2023年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に米人気歌手のテイラー・スウィフトさんを選び、米国だけでなく、世界中でブームを巻き起こした彼女をこう評した。

その象徴が23年3月中旬に北米から始まった5年ぶりの世界ツアー「ジ・エラズ・ツアー(The Eras Tour)」。24年2月には日本にも上陸した。米音楽雑誌ポールスターによると、23年のツアー興行収入は10億ドルを超え、歴代1位を記録。米映画情報サイトのボックス・オフィス・モジョによると、ツアーを題材にした映画は北米での興行収入が18億ドル以上と、コンサート映画として史上最高になったという。

彼女は偉業を達成したただのアーティストではない。経済活動への波及効果も大きく、「Swiftonomics(スウィフトノミクス)」という言葉が誕生。米株式市場でも、関連銘柄を動かした。

■米国内の経済効果、5カ月間で100億ドル以上との試算

米国野村証券は、彼女の公演があった都市の宿泊費の消費者物価指数(CPI)上昇率(前月比)が2.1ポイント程度押し上げられたとみる。米連邦準備理事会(FRB)が23年7月に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、「5月にフィラデルフィアで開催したテイラー・スウィフトのコンサートにより、パンデミック以来宿泊業の売上高が最も力強かった」との報告があったほどだ。

米旅行協会は、ツアーに伴う交通や食事などの支出を含むと、米国内での公演第1弾の5カ月間で100億ドル以上の経済効果をもたらしたと推定する。クレジットカード大手のマスターカードは、ツアーが開催された米国都市のレストランや宿泊への消費が促進されたことは「明確で一貫している」と結論づけた。コンサート会場から半径2.5マイルの地域では、飲食店での消費が最大68%、宿泊への消費が最大47%増加した。

ライブネーションの23年10~12月期決算では、売上高が前年同期比32%増の58億3890万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(47億9000万ドル)を大きく上回った。ライブ音楽業界の盛況を受けて、23年12月期通期はチケット販売などが過去最高を記録したという。

ツアー開催地では遠方から訪れた客による配車サービスの利用も増加する。ウーバーテクノロジーズのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は2月に米CNBCの番組内で、「スウィフトさんが街に来れば必ずウーバーの利用が伸びる」などと語り、「テイラー・スウィフト効果」を認めていた。

「スウィフティーズ」といわれるファンの間では装飾用の「フレンドシップ・ブレスレット」を作り、コンサート会場で交換し合うのが定番行事となっている。手芸・家庭雑貨販売のマイケルズはブレスレットの材料を販売する。ジョン・ジャンル最高マーケティング責任者(CMO)は米紙USA トゥデー宛てのメールで、「スウィフティーズは装飾品売上高に効果を与える『大規模で誠実な束』」だと記した。

■恩恵にあずかろうとする「不振企業」も?

ツアーの勢いは映画界にも及んだ。「ジ・エラズ・ツアー」のコンサート映画が23年10月に北米の大手映画館チェーンで公開されるとの発表を受け、公開初日の座席は数時間で完売。収益増への期待から、発表日の映画館運営のAMCエンターテインメント・ホールディングスの株価は最大で9%上昇する場面があった。

ことし3月からはウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」で配信が開始した。独占配信を公表した際にボブ・アイガーCEOは「ジ・エラズ・ツアー」は「世界中のファンを熱狂させ続ける真の現象」といい、利用者の増加に期待を示していた。

配信決定を公表した翌日のディズニー株は11%高となった。米複数メディアによると、配信開始後3日間の視聴回数は460万回となり、コンサート映画部門では過去最多を記録した。23年10月にプランを値上げしてもなお、根強いファンを持つコンテンツを取り入れることでほかの動画配信サービスとの差異化と成長を狙う。

もっとも、AMCとディズニーの株価を押し上げたのは一時的だった。AMCはコロナ禍で経営不振に陥り、今なお抜け出せない。ディズニーも動画配信事業の立て直しのさなかにあり、アクティビスト(物言う株主)の攻勢にさらされた。うがった見方をすれば、不振企業が経済を動かすスウィフトさんの恩恵にあずかろうとしているようにもみえる。

■ファンが動かすコト消費、好調はいつまで続くか

FRBが大幅な利上げをした後でも、米経済は底堅さを維持してきた。その一因は、消費の主役がモノからサービスへと移り変わってきたことにある。スウィフトさんだけでなく、女性歌手ビヨンセさんの世界ツアー「ルネッサンス・ツアー」も多くの観客を動員している。

こうしたファンが米国内だけでなく、世界を駆け回り経済を動かす。物価の押し上げも演出し、楽しい体験がインフレにつながるという意味の「ファンフレーション(funflation)」という造語もできた。コロナ禍で外出する機会が抑制されてきた反動か、消費者はライブイベントへの支出を増やしてきた。スポーツも例外ではなく、24年2月のCPIの「スポーツ入場料」は前年同月比で11%上昇した。23年10月には同25%上昇と、大幅な上昇を記録した。

23年から24年にかけてコロナ禍からの復活という点で注目を集めた都市はラスベガスだ。自動車レースの最高峰といわれる「フォーミュラワン(F1)」が初めて開催されたほか、全面を発光ダイオード(LED)で覆った球体のライブスペース「スフィア」ではアイルランド出身の人気バンドU2がこけら落とし公演を開いた。

2月には、プロアメリカンフットボールリーグ「NFL」の年間最強チームを決めるスーパーボウルがラスベガスのアレジアント・スタジアムで開かれた。カンザスシティー・チーフスが延長戦の末にサンフランシスコ・フォーティナイナーズを破り2連覇を達成。この会場には、チーフスのトラビス・ケルシー選手と交際するスウィフトさんが日本公演の終了後にとんぼ返りで駆けつけた。

ライブイベントを含む「コト消費」が米経済を支えてきたが、高金利環境が続く中で減速感も出てきた。スウィフトさんは世界ツアーを終えたあと、10月からは北米ツアーの第2弾に突入する。スウィフティーズに代表されるファンが米経済を支え、ソフトランディング(軟着陸)への軌道を確かなものにするのか。マクロ経済の観点からも、その動向に注目が集まる。

■スウィフトノミクス・ファンフレーションの関連銘柄

(騰落率は22年末~24年3月末、△は上昇、▲は下落)

ライブネーション(LYV) △51.7%
チケット予約サイト「チケットマスター」を運営
AMCエンターテインメント・ホールディングス(AMC) ▲89.6%
コンサートツアーを題材にした映画を配給
ウォルト・ディズニー(DIS) △40.8%
動画配信サービスでツアー映画を独占配信
スフィア・エンターテイメント(SPHR) 2.4倍
ラスベガスで「スフィア」などエンタメを提供
リバティー・メディア・フォーミュラ・ワン(FWONA) △14.6%
F1を開催
■ユニバーサル・ミュージック・グループ(アムステルダム市場) △23.9%
テイラー・スウィフトさんなどアーティストが所属
ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD) ▲7.9%
映画制作やテーマパーク運営
コムキャスト(CMCSA) △24.0%
テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」を運営
エアビーアンドビー(ABNB) △92.9%
民泊サービスを提供
ウーバーテクノロジーズ(UBER) 3.1倍
配車サービスを提供
リフト(LYFT) △75.6%
配車サービスを提供
ブッキング・ホールディングス(BKNG) △80.0%
旅行予約サイト
トリップアドバイザー(TRIP) △54.6%
旅行予約サイト
エクスペディアグループ(EXPE) △57.3%
旅行予約サイト

 

著者名

NQNニューヨーク 稲場 三奈


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