【NQNロンドン=蔭山道子】欧州株式市場で、消費関連株が底堅い。ドイツをはじめ欧州経済には不安が根強いものの、化粧品や日用品といった消費財を扱う企業の直近の決算をみると欧州での売り上げが想定以上に伸び、収益の支えとなっている。
食品・日用品大手の英ユニリーバが25日公表した2024年1~3月期決算で、売上高は150億ユーロ(約2兆5000億円)と前年同期比で1.4%増えた。為替や資産売却などの影響を除くと4.4%の増収。地域別にみると欧州は4%増と市場予想(2%程度の増加)を上回った。米州(同5.8%増)ほどではなかったもののアジア太平洋・アフリカ地域(同3.6%増)より高い伸びとなった。
化粧品大手の仏ロレアルが18日公表した24年1~3月期の売上高をみても、全体の3割を占める欧州が12%増と「予想に比べ特に強かった」(米ジェフリーズ)。「ニベア」ブランドを展開する独バイヤスドルフは24年1~3月期に全体の4割を占める欧州での売上高(為替などの影響を除く)が前年同期比9%近く増えた。
こうした企業決算が「欧州での個人消費回復の芽(グリーンシュート)を映しているかもしれない」と話すのは米ムーディーズのシニアエコノミスト、カミル・コバール氏だ。昨年以降、ユーロ圏の物価上昇率が急速に弱まるなかで、賃金の伸びが物価の伸びを超えるようになっている。個人消費は緩やかに回復に向かうとの見方を示す。
だが、株価の先行きには厳しい見方が多い。世界で考えれば欧州の需要が回復しそうな半面、中国などでの先行きに懸念が残る。例えばロレアルについて、英HSBCは今期の予想PER(株価収益率)が約34倍だと分析。欧州の需要増を踏まえて通期の売上高(為替影響などを除くベース)予想を7.9%増に引き上げたものの、そうした好材料は「ほぼ織り込まれており、株価の上振れ余地は限られる」とみる。
ユニリーバ株については、見方が割れる。ドイツ銀行のアナリストチームは足元の予想PERが来期(25年12月期)ベースで16倍程度だと指摘。類似企業の予想PER(20倍程度)を踏まえて目標株価を4600ペンス(24日終値で3863ペンス)に置く。一方で米ジェフリーズは、インド市場などでの競争激化を懸念して目標株価を3400ペンスとしている。