【NQNロンドン=蔭山道子】欧州の自動車株がさえない。独BMW株が9月10日まで8日続落するなど自動車と自動車部品株はこの春以降、水準を大きく切り下げた。背景にあるのは、中国を中心とした自動車の需要低迷だ。欧州各社からはリストラ策の公表といった後ろ向きな動きが相次ぎ、ドイツ製造業の回復にも影を落とす。
BMWは10日、2024年12月通期の販売台数見通しを前年比「微増」から「微減」へ下方修正した。EBIT(利払い・税引き前損益)の利益率見通しも6~7%と従来の8~10%から引き下げた。自動車部品の独コンチネンタルから供給を受けるブレーキシステムの不具合による150万台超を対象とした納車停止とリコール(回収・無償修理)が響く。あわせて「中国での需要低迷も販売台数に影響する」と説明した。
「欧州の自動車産業は非常に過酷で深刻な状況にある」。フォルクスワーゲン(VW)のオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は2日、業界が直面する厳しさに言及した。同社はドイツ国内工場の閉鎖も視野に入れたリストラ策の検討に動いている。
スウェーデンのボルボ・カーは30年までに全新車を電気自動車(EV)にするとの目標を撤回。スウェーデンの新興電池メーカーのノースボルトは人員削減や一部施設の売却などを進める方針だ。
回復途上にあるドイツ経済にも暗雲が漂う。「ドイツの製造業不況は予想以上に長引いている。8月は受注が急減し、早期回復の見込みも絶たれた」。米S&Pグローバルが公表した8月のドイツ製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)を踏まえ、独ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏はこうコメントした。
ドイツの製造業PMIは今年8月まで約2年にわたり、好不況の境目である50を下回り続けている。内外需要の弱さに、中国との競争激化という逆風が重なる。デラルビア氏は、ドイツ内外において「自動車などの領域で(中国が)ドイツ企業に真っ向から張り合ってきている」と指摘する。
欧州主要600社の株価指数ストックス600の業種別で「自動車・同部品」は、足元で23年末比1割低い水準で、ストックス600全体(同6%高)を大きく下回る。市場では、アナリストが目標株価などを個別に引き下げる事例も相次ぐ。
独ベレンベルク銀行のアナリストは、全体的にみればキャッシュの創出能力や財務基盤は強いとして「投資尺度の面からは株価に割安感がある」とみる。だが、そうした議論が現実のものになるのは「収益環境の改善がみえてから」と慎重だ。
需要軟化に加えて欧州連合(EU)と中国の貿易摩擦、電気自動車(EV)購入補助金といった各国政府の施策、欧州で導入が検討されている次なる排ガス規制など、自動車を取り巻く環境には不透明な要素が多い。欧州の自動車・自動車部品株はまだしばらく不安定な推移が続きそうだ。