【QUICK Money World 辰巳 華世】2024年も終わりが近づいてきました。24年の日本株・米国株・為替・金利マーケットを振り返る記事を配信しています。第一弾の日本株、第二弾の米国株に続き、今回は24年のドル・円相場・金利を振り返ります。
投資初心者にとって、過去を振り返り、その時々の材料がマーケットをどう動かしたのかを確認することは投資にとても役立ちます。過去の事例を積み上げ、今後の自分の投資活動に活かしていきましょう。
2024年のドル円相場
24年のドル円相場は、一時1ドル=160円台を付けるなど歴史的な円安・ドル高水準となりました。一方、140円台の円高に反転する場面もあり振れ幅の大きな一年でした。年前半は円安・ドル高の流れ、夏場にかけて日米の金融政策の変更をきっかけに円高傾向が強まり、年末にかけて再びドル円相場は160円目前まで下落しました。
■2024年のドル円チャート(2024/1/1〜2024/12/23)
為替相場はさまざまな要因で動きますが、24年のドル円相場は特に金利変動の影響を大きく受けました。24年は日米の金融政策の転換点となる節目の年でした。米国ではインフレに一服感が出始めたことで米連邦準備理事会(FRB)による利下げを、日本では景気回復から日銀によるマイナス金利の解除や利上げのタイミングを探る1年となりました。
日本の金利は米国金利より低いため、低金利の円で資金調達してドルで運用することでより高い利益を見込めます。こうした取引は「円キャリー取引」と呼ばれ、円売り・ドル買いを伴うため、円安・ドル高要因となることが多いです。そんななか、FRBが利下げ、日銀が利上げに動くということは、日米の金利差が縮まってドルに投資するうまみが減ることにつながります。
このように為替と金融政策は密接に関係しており24年の外国為替市場では日米の金融政策の行方が注目されたのです。
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24年前半のドル円を振り返る
24年前半は、日米金利差がそれほど縮小しないとの見方から23年に続き円安・ドル高の流れが続きました。ドル円相場は4月に160円台まで下落しました。
日銀が3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃を決めましたが、円安の流れは止まりませんでした。日銀が政策修正後も当面、金融緩和的な姿勢を続けるとの見方が市場で広がったことに加え、米国の早期利下げ観測が後退したからです。
1ドル=160円台と大きく進んだ円安に対抗して、政府・日銀は4~5月に円買い為替介入を実施しました。この介入は短期的な円高をもたらしましたが、円安・ドル高の流れをせき止めるには至りませんでした。
ここ数年進んだ円安の大きな理由は日米金利差の拡大でした。24年は日銀がマイナス金利解除に踏み切るなど金融政策の方向性が変わったことで円安に歯止めがかかるとの見方があったものの、日銀が急速な金融引き締めに動くことはないとの見方が根強く、円売りが続く結果となりました。
また、24年はNISA(小額投資非課税制度)が新制度に移行したことで、対外国株投資の増加が円安要因になった可能性もあります。米国投信に多くの投資資金が流入したため、円を売りドルを買う流れが強まったと考えられます。
24年後半のドル円を振り返る
年前半は歴史的な円安水準で推移したドル円相場でしたが、7月中旬以降は円高・ドル安が進む場面がありました。円安から円高への反転の大きな理由は、日米金融政策の変更で、大きく開いていた日米金利差が縮小することが意識されたからです。
日本政府・日銀は5月に続いて7月にも為替介入を実施し、円相場は円高・ドル安に振れました。さらに日銀は7月30~31日の金融政策決定会合で利上げを決定しました。市場では今後の追加利上げへの思惑も広がりました。
一方、米国は利下げです。FRBは9月18日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利下げを決めました。
日米の金融政策の方向性の違いから日米金利差が縮小することで、これまでの円キャリー取引の巻き戻し(取引の解消)が起こり、一転円高・ドル安の傾向が強まりました。ドル円相場は9月には一時139円台まで上昇しました。
ただ、この円高の流れは長くは続きませんでした。10月に入ると、米長期金利が大幅に上昇したことや日銀の早期利上げ観測が後退したことで再び円安が進みました。11月の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利すると財政拡張的な政策の実現を見込んだ「トランプトレード」が広がり、米長期金利が上昇、円安・ドル高の流れが強まりました。
ウクライナとロシアを巡る地政学リスクの高まり、トランプ次期米大統領の関税強化の方針で「低リスク通貨」とされる円を買う動き、日銀の利上げ観測など円高につながる要因もありましたが、その影響は短期にとどまっています。
12月の日米の金融政策決定会合の結果を受けて、年末の為替相場は再び円安傾向が強まっています。FRBは利下げを決めましたが、25年の利下げペースが鈍化するとの見方が広がりました。一方の日銀は利上げを見送り、早期利上げにも慎重な姿勢が見られたことで日米金利差が一段と意識され、1ドル=160円が迫る水準まで円安・ドル高が進んでいます。
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まとめ
24年のドル円相場は、一時160円台を付けるなど歴史的な円安・ドル高水準となりました。日米の金融政策の転換で金利差は縮小に向かったものの、その変化は緩やかとの見方から円安傾向が続いています。夏場には一転急速な円高が進む場面もありましたが、25年の日米金融政策の見通しを背景に、年末にかけては再び円安の流れとなっています。25年も日米の金融政策動向に注目です。
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