【QUICK Money World 辰巳 華世】2024年も終わりが近づいてきました。これから24年の日本株・米国株・為替・金利マーケットを振り返る記事を配信していきます。今回は、第一弾として24年の日本株マーケットを振り返ります。
投資初心者にとって過去を振り返り、その時々の材料がマーケットをどう動かしたのかを確認することは今後の投資活動にとても役立ちます。過去の事例を積み上げ、今後の自分の投資活動に活かしていきましょう。
2024年の日本株は、振れ幅は大きいものの堅調な相場
24年の日本株を振り返ると、振れ幅は大きいものの堅調な相場でした。日経平均株価はバブル期1989年末の3万8915円を超えて、最高値を更新。初めて4万円台に上昇しました。日経平均は8月に過去最高の下落幅を記録しましたが、12月に日経平均株価は一時 4万円台を再び付け、1月4日の大発会始値(3万3193円)から 20.7%上昇したことになります。
日経平均チャート(20240104〜20241220)
24年は、日米の金融政策の行方に加え、日本は自民党総裁選挙に衆議院選挙、米国は大統領選挙など相場を大きく動かす材料が多くある一年でした。年間を通じてAI(人工知能)関連銘柄が相場をけん引し、防衛関連銘柄や年初ではインバウンド銘柄などもテーマとして注目されました。
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日経平均採用銘柄の年間上昇率ランキングトップ20
銘柄名 | コード | 上昇率 | |
1 | フジクラ | 5803 | 471.79% |
2 | 古河電 | 5801 | 210.81% |
3 | IHI | 7013 | 203.58% |
4 | 三菱重 | 7011 | 171.91% |
5 | 日製鋼 | 5631 | 156.45% |
6 | 川 重 | 7012 | 108.90% |
7 | コナミG | 9766 | 104.07% |
8 | DeNA | 2432 | 96.18% |
9 | アドバンテ | 6857 | 91.27% |
10 | MS&AD | 8725 | 86.50% |
11 | 日 立 | 6501 | 86.00% |
12 | リクルートHD | 6098 | 83.84% |
13 | SOMPOHD | 8630 | 79.88% |
14 | 大林組 | 1802 | 63.92% |
15 | リコー | 7752 | 63.87% |
16 | NEC | 6701 | 61.72% |
17 | コニカミノルタ | 4902 | 61.38% |
18 | ミツコシイセタン | 3099 | 58.47% |
19 | 三井住友 | 8316 | 57.89% |
20 | 大塚HD | 4578 | 57.88% |
これは日経平均採用銘柄の年初から12月20日時点の上昇率トップ20です。1位のフジクラ(5803)は年初から5.7倍に、2位の古河電気工業(5801)は3.1倍に上昇しました。フジクラ、古河電ともに 生成AIのデータ処理向けデータセンター建設の増加で、 光ファイバーや高密度光ケーブルなどの需要が高まると期待が集まりました。9位にはアドバンテスト(6857)が91%上昇するなどAI半導体銘柄も大きく上昇しています。3位はIHI(7013)で約3倍、4位は三菱重工業(7011)で2.7倍、6位の川崎重工業(7012)は約2倍になりました。いずれも 防衛関連銘柄として注目されています。
24年の日経平均は値動きが激しい1年でした。日経平均は、 7月に一時、4万2426円まで上昇し過去最高値を付けました。一方で、8月初旬に日経平均が一時、3万1156円まで下げるなど 歴史的な急落もありました。急落後は落ち着きを取り戻し、12月に再び4万円を一時付ける展開となりました。
今回は、日経平均の動きをベースに各四半期ごとの日本株の動きを振り返ります。その時々の物色傾向や注目されたテーマなどを織り交ぜながら、当時のマーケットを見てみましょう。マーケットの動きと共に自分の1年を振り返って見るのも面白いかもしれませんね。それでは各四半期ごとに振り返っていきましょう。
1月―3月 右肩上がりの1本調子、年初から21%上昇
日本の24年は、1月1日に発生した能登半島地震や羽田空港でJAL機と海上保安庁の航空機が衝突した事故が起こるなど先行きの不安が高まるスタートでした。1月4日の大発会も日経平均が一時700円超も下落するなど波乱の幕開けとなりました。前日の米株市場でハイテク株が売られたことで主要株価指数が下落したことや、能登半島地震の経済への影響が高まる警戒感などでパニック的な売りが出ました。
先行きが心配となる日本株のスタートでしたが、その後の相場展開は 右肩上がりの1本調子で上昇しました。年明けに進んだ 円安や、米国でのハイテク株上昇、海外投資家の日本株の大幅買い越しなどが追い風となりました。日経平均は87年につけた最高値を2月22日に34年ぶりに更新し、3月4日には初めて4万円台を記録しました。日経平均は3月末に21.6%上昇しました。
24年の年間を通じて大きなテーマとなっている生成AI関連銘柄は、年初から注目を集めました。AI半導体メーカー大手の 米エヌビディアの株価上昇を受け、日本でも半導体などハイテクグロース株が相場のけん引役となりました。また、円安を背景に インバウンド関連銘柄の上昇も目立ちました。
24年は日本が「金利のある世界」へ本格回帰する1年となり日銀の金融政策の行方が注目されました。日銀は、 3月18−19日に開催された日銀の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃を決めました。日銀の植田和男総裁がマイナス金利解除などを決めたことは「利上げ」との認識を示したものの、株式相場は教科書通りの「利上げ・株安」の動きにはなりませんでした。市場では日銀が政策修正後も当面、金融緩和的な姿勢を続けるとの見方から、円安・ドル高が進行、日経平均株価も上昇に転じる展開となりました。
4月―6月期 ボックス圏で推移、上値の重い展開
1−3月期に1本調子で上昇した日経平均は4−6月期には踊り場を迎え、 3万7000円前後から4万円前後のボックス圏で推移しました。5月には国内企業による24年3月期決算の決算発表が本格化し、 製造業を中心に好決算が相次ぎました。ただ、同時に発表された 25年3月期の会社計画に弱さが目立ちました。また、日銀の国債買い入れ減額や追加利上げへの警戒感もあり、上値の重い相場展開となりました。
24年はNISA(少額投資非課税制度)が新制度に移行したこともあり、個人投資家の株式投資熱が高まりました。中でもNTT(9432)、ソフトバンク(9434)など高配当銘柄に人気が集まりました。
7月―9月期 歴史上に残る激しい値動き
7月ー9月期は歴史上に残る値動きが激しい展開となりました。7月1日に3万9893円で始まった日経平均は、9月30日に3万7919円と4.9%下落して終わりました。
1ドル=160円を付けた円安の進行を背景に輸出関連株の業績上振れ期待などから7月に日経平均は4万2200円台に達して過去最高値を更新しました。株価上昇をけん引したのはAI半導体を中心としたハイテクグロース株でした。
しかし、8月に入ると相場は一変します。 5日の日経平均は3万1000円台まで急落し歴史的な下げ幅を記録します。7月下旬の日銀の利上げ決定に加え、7月の米雇用統計発表をきっかけに米景気への不透明感が急速に強まり米国の利下げ開始が再び意識され日米金利差の縮小するとの見方からこれまでの円安・株高の流れが一気に逆転し、パニック的な売りに繋がりました。
パニック的な急落だったので 翌日には割安な水準まで売り込まれた銘柄を中心に買い戻され、日経平均は3217円高とこちらも 過去最大の上げ幅を記録しました。その後、落ち着きを取り戻したマーケットは、8月末には3万9000円台まで回復しました。
ただ、9月に入ると 円高が重しとなり軟調な展開が続きました。月末にかけて自民党総裁選で利上げに否定的な立場をとる高市早苗氏の勝利を見込んだ「円安・株高トレード」で再び4万円目前まで上昇するも、蓋を開けてみたら 石破茂氏が勝利となりこれまでの「円安・株高トレード」の持ち高を巻き戻す動きから日経平均は2000円を超える下落となりました。
10―12月期 選挙などイベント続くも上値重い展開
10−12月期の日経平均は3万8000円前後を底値に堅調に推移するも、上値の重い展開となりました。 10月27日投開票の 衆議院総選挙に続き、11月5日は 米大統領選挙とイベントが続く時期でした。10月は日米選挙を控え様子見ムードが広がったことに加え、衆院選について事前の報道で与党の苦戦が伝わっていたこともあり相場は軟調に推移しました。
衆院選は、与党の自民党と公明党が目標としていた 過半数の233議席を割り込む結果となりました。衆院選投開票前にあたる10月25日の日経平均株価終値は、衆議院解散前日の9日と比べ3%下落しました。与党の苦戦は選挙前から報じられていましたが、株式市場で半世紀以上続いてきた「選挙は買い」のアノマリー(経験則)が崩れました。事前に株価にある程度織り込まれていたことや、石破茂政権が積極的な財政出動に前向きな国民民主党などの一部野党との連携の思惑などから選挙後の日経平均は3万9000円台まで上昇しました。
11月に入ると5日に米大統領選の投開票を控え、日経平均は一時1100円下げるなど不安定な展開でした。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の激しい争いは直前まで5分5分との見方で緊張感が高まりましたが、結果は トランプ氏が圧勝でした。米国相場は大統領選挙後トランプトレードで好調な展開が続いている一方で、日本株は新たに就任するトランプ大統領が各国からの輸入品の関税を引き上げる可能性があるなど 先行きに対する不透明感が高まっていることもあり、上値の重い展開が続きました。ただ年末にかけては節目の4万円を回復し、「掉尾の一振」を演じました。
日米で新しいリーダーが決まったことで、政策関連の銘柄が注目されています。石破氏の政策では、防衛力の強化や安全保障の確立、防災省の創設、地域経済の活性化、金融所得課税の強化などを掲げています。中でもトランプ次期大統領は同盟国に防衛費の増額を迫っており、日本も米国から防衛能力強化が求められるとの思惑から 防衛関連株がテーマとして注目されています。また、年間を通じてテーマ株としての 生成AI関連銘柄や日銀の利上げによる金利上昇の恩恵を受ける 銀行株なども注目を集めています。
まとめ
24年の日本株は、振れ幅は大きいものの堅調な相場でした。日経平均は12月に再び4万円の節目を回復し、年初から約2割高い水準にあります。年間を通じてAI半導体などハイテク株が相場をけん引しました。年初には、テーマ株としてインバウンド銘柄が、年後半には防衛関連銘柄などが注目されました。
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