【QUICK Money World 片岡 奈美】国や地方自治体、企業などが投資家から資金を調達することを目的に発行される「債券」。株式とは異なり、あらかじめ受け取る利率や満期などが決まっている金融商品とあって、手堅い投資先といったイメージをもたれる方も少なくないでしょう。
債券は、発行体(債券を発行する主体)がお金を借りる際に作成する借用書のようなものです。デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ仕組み債などを除くと、発行体が破綻や資金難などに陥らなければ、あらかじめ決まった利息が定期的に支払われ、満期日に購入時の元本が償還されます。株式と比較すると、大きな収益(リターン)が期待できない一方、満期前に売却する場合の価格変動幅(リスク)が抑えられている商品性とあって、リスクを敬遠する個人投資家の間でも一定の人気を集めています。
「債券や金利の情報はどこにあるの?」——。巷に溢れる投資情報は、株式や投資信託、外為証拠金(FX)取引などに関するものばかり。この記事では、簡単に足元の金利動向を解説し、個人投資家も購入できる国債や社債についてもご紹介します!ぜひ最後までご覧ください。
12月の長期金利動向 ~13年5カ月ぶりに、1%を下回らずに推移~
前月2024年12月の長期金利はその前の月よりも高い水準となりました。指標となる新発10年物国債の利回りは1%を超える水準で推移。長期金利が1%を下回ることなく推移した月は、2011年7月以来13年5カ月ぶりのことでした。
日本銀行が12月18~19日に開いた金融政策決定会合をめぐり、債券市場では追加の利上げ観測が高まりました。実際の12月会合では追加の利上げは見送られましたが、それでも日銀がこの先の景況感を確認しながらも緩やかに政策金利を引き上げていくだろうという見方は市場参加者の間で多勢を占めています。日銀の政策金利の影響を受けやすい償還までの残存期間が短い年限を中心に利回りに上昇圧力がかかる状況は続いています。
年末には指標となる新発10年物国債の利回りが1.1%を超え、2011年7月以来およそ13年半ぶりの水準まで上昇する場面もありました。これには、年末年始休暇を前に市場参加者が減り売買量が乏しくなっている場面で、相場がぶれやすかったとの指摘が出ていました。
ただ、時期的なことだけでなく、前述の日銀への利上げ観測のほか、米国では堅調な景気動向やトランプ次期大統領の政策を見込んで米金利の先高観が強まっていることなども、長期金利の上昇を促した面があったようです。
長期金利については、こちらの記事もご参照ください。
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今月申し込める!個人向け国債の利率と発行状況
個人向け国債は、国が発行する債券で、元本割れがなく、最低金利の補償がされていることなどが特徴です。
財務省が1月(1月9日~1月31日)に募集する2月発行の個人向け国債の発行条件は、変動10年(第178回、変動金利型10年満期)の初回適用利率は年率で0.75%(税引前)となり、前月の募集分(第177回、0.71%)より引き上げられました。初回利率としては2011年7月(0.77%)以来の高い水準となっています。
固定5年(第166回、固定金利型5年満期)の利率は年率で0.77%(税引前)と、前月(第165回、0.71%)に比べ高くなりました。これは2009年7月債(0.82%)以来の高い水準です。
固定3年(第176回、固定金利型3年満期)の利率も年率で0.62%(税引前)と、前月(第175回、0.60%)に比べ上昇しています。
機関投資家らが売買する国債の利回りが短期債を中心に上昇してきている影響が、個人向け国債の利率にも表れています。
個人向け国債の3年物や5年物の金利は満期まで据え置かれます。一方で、変動10年物は半年ごとに適用金利が見直されるため、インフレ圧力が高まり金利が上昇しやすい局面では固定金利の商品よりも有利な金融資産です。
いずれも半年ごとに利息が支払われ、発行から1年が経過すれば1万円単位で中途換金が可能です。中途換金の際には、直近2回に受け取った利子を返却することになりますが、国が元本の金額で買い取りますので元本割れのリスクはありません。
個人向け国債を購入する口座を開設している金融機関が破綻した場合でも、買い付けた国債の権利は保護され、元本や利子の支払いは受けられます。もしものことがあっても、国が発行しているという安心感は強いですよね。
個人向け国債についてはこちらの記事でも紹介していますので、ぜひご一読ください。
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今月の住宅ローン金利の動向(フラット35)
住宅ローンの水準は前月と同水準となっています。
住宅金融支援機構の「フラット35」(長期固定金利の住宅ローン、買い取り型)の1月の適用金利をみると、返済期間21年以上35年以下(融資率9割以下)の場合、年1.860~3.570%となり、24年12月(1.860~3.570%)と最低金利、最高金利ともに同じ水準で据え置かれました。
個人投資家向け社債や地方債の発行状況
地方自治体や企業なども、投資家から直接資金を調達することを目的として債券を発行しています。地方自治体が発行するものは「地方債」、企業が発行するものは「社債」と呼ばれています。
最低購入単位は10万円単位、100万円単位などで、いわゆるプロの投資家とされる機関投資家向け(1億円単位が基本)の債券に比べれば低く設定されています。
債券は定期的に発行時に決まった利子を受けとることができ、満期を迎えれば額面金額の償還を受けることができる金融商品ですが、その利率は金融政策や経済情勢、発行体の財政事情などで変動します。債券の商品性も利率に大きく影響を与えます。円で購入する「円建て債」のほか、外貨建てで購入し外貨で償還を受ける「外貨建て債」、海外の発行体が日本国内で発行する円建て債の「サムライ債」などは個人投資家向けにもなじみのある呼称ですよね。
それでは、2024年10月から足元(25年1月15日)までに発行条件の決まった銘柄について見てみましょう。
24年12月にはグリーンボンド(環境債)の募集が目立ちました。東京都の「東京グリーン・ブルーボンド(外貨)」は申し込みが12月6日から19日までとなっていましたが、9日には完売のお知らせが出るなど為替リスクはあるものの5年で3%台後半の利率が人気を集めたとみられています。
この他、電力債やソフトバンクグループ(SBG、9984)債など個人投資家にも一定のなじみのある銘柄も相次ぎ発行されました。
1月には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の劣後特約付き社債の条件が決定しました。日銀の利上げの影響で、個人向けの地方債や社債などの利率も上昇しています。実際に投資する際には、発行体の信用力や商品性などを確認し、投資を検討するようにしましょう。
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