【QUICK Money World 片岡 奈美】国や地方自治体、企業などが投資家から資金を調達することを目的に発行される「債券」。株式とは異なり、あらかじめ受け取る利率や満期などが決まっている金融商品とあって、手堅い投資先といったイメージをもたれる方も少なくないでしょう。
債券は、発行体(債券を発行する主体)がお金を借りる際に作成する借用書のようなものです。デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ仕組み債などを除くと、発行体が破綻や資金難などに陥らなければ、あらかじめ決まった利息が定期的に支払われ、満期日に購入時の元本が償還されます。株式と比較すると、大きな収益(リターン)が期待できない一方、満期前に売却する場合の価格変動幅(リスク)が抑えられている商品性とあって、リスクを敬遠する個人投資家の間でも一定の人気を集めています。
「債券や金利の情報はどこにあるの?」--。巷に溢れる投資情報は、株式や投資信託、外国為替証拠金(FX)取引などに関するものばかり。この記事では、簡単に足元の金利動向を解説し、個人投資家も購入できる国債や社債についてもご紹介します!ぜひ最後までご覧ください。
1月の長期金利動向の振り返り
1月の国内の長期金利はその前の月(2024年12月)よりも一段と高い水準で推移しました。指標となる新発10年物国債の利回りは1月半ばには1.255%と11年4月以来、13年9カ月ぶりの高さまで上昇する場面がありました。日本銀行の政策金利引き上げや米国の長期金利の上昇などが背景にあります。
日銀は1月23~24日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利を0.25%から0.5%に引き上げると決めました。同時に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、26年度までの物価見通しを引き上げたこともあり、金融市場参加者の間ではこの先も利上げが続くとの見方が強まりました。日銀の政策金利の影響を受けやすい2年債などを中心に国債利回りは上昇しました。
海外金利の情勢も国内金利の動向に影響を与えています。アメリカの経済指標が堅調だったことやトランプ政権による関税強化が米国のインフレ加速につながるといった見方などから、アメリカの長期金利が上昇基調にあったことも、国内金利の上昇を誘いました。
長期金利については、こちらの記事もご参照ください。
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今月申し込める!個人向け国債の利率と発行状況
個人向け国債は、国が発行する債券で、元本割れがなく、最低金利の補償がされていることなどが特徴です。
財務省が2月(2月6日~2月28日)に募集する3月発行の個人向け国債の発行条件は、変動10年(第179回、変動金利型10年満期)の初回適用利率は年率で0.83%(税引前)となり、1月の募集分(第178回、0.75%)より引き上げられました。初回利率としては2008年7月(1.00%)以来の約17年ぶりの高水準となっています。
固定5年(第167回、固定金利型5年満期)の利率も年率で0.89%(税引前)と、前月(第166回、0.77%)に比べ高くなりました。これは2008年10月債(0.99%)以来の高い水準です。
固定3年(第177回、固定金利型3年満期)の利率も年率で0.74%(税引前)と、前月(第176回、0.62%)から一段と上昇し、3年債が導入された2010年7月以降では最も高い水準となっています。
日銀の追加利上げ観測が一段と強まり、政策金利の影響を受けやすい中期債を中心に、個人向け国債の基準金利となる固定利付国債の利回りが上昇しています。
なお、個人向け国債の金利の決め方は以下のように年限によって違いがあります。
このため、2月募集の銘柄では5年物の利率の方が変動10年物の当初利率よりも高いといういびつな状況になっています。もっとも、変動10年物は発行後も利率が半年ごとに市中金利の動向を反映して変動するため、このような状況がずっと続くとは限りません。
個人向け国債の3年物や5年物の利率は満期まで据え置かれます。一方で、変動10年物は半年ごとに適用利率が見直されるため、インフレなど金利が上昇している局面では固定金利の商品よりも有利な金融資産です。
いずれも半年ごとに利息が支払われ、発行から1年が経過すれば1万円単位で中途換金が可能です。中途換金の際には、直近2回に受け取った利子を返却することになりますが、国が元本の金額で買い取りますので元本割れのリスクはありません。
個人向け国債を購入する口座を開設している金融機関が破綻した場合でも、買い付けた国債の権利は保護され、元本や利子の支払いは受けられます。もしものことがあっても、国が発行しているという安心感は強いですよね。
個人向け国債についてはこちらの記事でも紹介していますので、ぜひご一読ください。
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今月の住宅ローン金利の動向(フラット35)
住宅ローンの水準はほぼ横ばいで推移しています。
住宅金融支援機構の「フラット35」(長期固定金利の住宅ローン、買い取り型)の2月の適用金利は、返済期間21年以上35年以下(融資率9割以下)の場合、年1.890~3.570%です。1月(1.860~3.570%)と比べると、最低金利はやや上昇したものの、最高金利は同じ水準となっています。
個人投資家向け社債や地方債の発行状況
地方自治体や企業なども、投資家から直接資金を調達することを目的として債券を発行しています。地方自治体が発行するものは「地方債」、企業が発行するものは「社債」と呼ばれています。
最低購入単位は10万円単位や100万円単位などが多く、いわゆるプロの投資家とされる機関投資家向け(1億円単位が基本)の債券に比べれば低く設定されています。
債券は定期的に発行時に決まった利子を受けとることができ、満期を迎えれば額面金額の償還を受けることができる金融商品ですが、その利率は金融政策や経済情勢、発行体の財政事情などで変動します。債券の商品性も利率に大きく影響を与えます。円で購入する「円建て債」のほか、外貨建てで購入し外貨で償還を受ける「外貨建て債」、海外の発行体が日本国内で発行する円建て債の「サムライ債」などは個人投資家向けにもなじみのある呼称ですよね。
それでは、2024年11月から足元(25年2月6日)までの3カ月ほどの間に発行条件が決まった個人投資家向けの銘柄を見てみましょう。
1月にはクレディセゾン(8253)の5年債(利率1.211%)や、ソフトバンクグループ(SBG、9984)の通信子会社ソフトバンク(SB、9434)の7年債(利率1.81%)などの発行条件が決まりました。いずれも格付投資情報センター(R&I)が「シングルAプラス」、日本格付研究所(JCR)は「ダブルAマイナス」の格付けを付与している銘柄です。残存期間が近い国債の利回りに対する上乗せ幅(スプレッド)が格付け対比で妙味があると感じた投資家や、利率の高さに着目した投資家からの買いを誘ったようです。
2月には国際協力機構(JICA)が2年債の条件決定を予定していると発表しています。個人向け「JICA SDGs債」という名称で、社会的課題や環境課題の解決に資するプロジェクトの資金調達のためのサステナビリティボンドとして発行される予定です。
金利上昇で個人向けの地方債や社債などへの関心も高まっているようです。実際に投資する際には、発行体の信用力や商品性などを確認し、投資を検討するようにしましょう。
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