QUICK資産運用研究所は9月19日、東京・丸の内で「QUICK資産運用討論会FIN/SUM(フィンサム)スペシャル」を開いた。日本経済新聞社と金融庁、Fintech協会が主催する「FINtech/SUMmit WEEK2017」のワークショップとしての開催。
200席近い会場がほぼ満席となり、金融とテクノロジーを融合したフィンテックが日本の資産運用を変える「切り札」になるか、金融庁をはじめ各界の代表者が熱のこもった意見を交わした。
金融庁参事官「多くの国民には『投資は貯めてからするもの』と思い込み」
討論は「資産運用はなぜ広がらないか」「マネーの流れを変えるには」「フィンテックは背中を押してくれるか」という3つのテーマに沿って進んだ。
今回の討論会ではフィンサムならではの試みとして、会場参加者にスマホを通じてアンケート調査する「参加型のパネルディスカッション」のスタイルを取った。
金融庁参事官の油布志行氏は「多くの国民には『投資は貯めてからするもの』との思い込みが染みついている。実際のところ、それでは将来の資産形成は難しい」との考えから、マインド(意識)を「投資しながら貯める」に変える政策の意味合いを説明。来年からスタートする「つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)」を通じた資産形成への取り組みの広がりに期待を寄せた。
回答者47人「金融機関は信用できる」がゼロ
ロフトワーク代表取締役の林千晶氏は個人と金融機関との距離感を指摘した。金融機関の信頼性に関して会場参加者にスマホで回答を募ったところ、47名の回答者のうち「金融機関は信用できる」とした回答はゼロで「あまり信用できない」は20人ほどだった。フィンテックで金融機関がより身近になる余地は大きそうだ。
「高齢者だけを相手にした投資信託の販売ビジネスモデルはいずれ行き詰まる」というレオス・キャピタルワークス代表取締役社長の藤野英人氏は「金融庁は長官が『10年後の未来から舞い降りたターミネーター』として先頭に立ち、資産運用業界の将来を見据えた政策を立案している」と評価した。
フィンテックのアイデアがこれから具体化
日本でベンチャー企業を立ち上げたオーストラリア出身のマネーツリー代表取締役のポール・チャップマン氏は豪州と比べた日本の投資教育の不十分さについて問題提起。藤野氏は投資教育のはじめの一歩として個人が「働くことの素敵さ」を再認識することが不可欠であり、投資されるような会社であってこそ会社は素敵になるとの考えを披露した。
個人が安心して「投資しながら貯める」資産形成を始める――。そんな動きを後押しする様々なフィンテックのアイデアがこれから具体化してきそうだ、との認識を深める討論会になった。
(QUICK資産運用研究所)
◆QUICK資産運用討論会FIN/SUMスペシャル◆
【テーマ】「フィンテックが変える日本の資産運用」
【日 時】2017年9月19日(火) 16:00~18:00
【場 所】新丸の内ビルディング9階 コンファレンススクエア Room901
【登壇者】パネリスト(50音順)
◯ポール チャップマン 氏(マネーツリー 代表取締役)
◯林 千晶 氏(ロフトワーク 代表取締役)
◯藤野 英人 氏(レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長)
◯油布 志行 氏(金融庁 参事官)
モデレーター
◯北澤 千秋(QUICK資産運用研究所長)