インターネット上の仮想通貨市場に相変わらず活気がない。ここにきて下げが目立つのはビットコインに次ぐ市場規模を有するイーサリアムで、日本時間30日朝方に昨年11月以来の安値を付けた。国内外で相次いだ仮想通貨交換業者の不祥事以降、ヘッジファンドなどの大口投資家の需要は細った。含み損を抱えた個人投資家は焦りを募らせ、売りを急ぐ傾向にある。
イーサリアムのドル建て価格は一時1イーサリアム=370ドル程度と、1月中旬に付けたピークの1400ドル台の4分の1程度になった。ここ1週間で売り圧力が強まり、下落率は30%に達する。イーサリアムは取引記録だけでなく、いつ誰に送金したかなど詳細な契約内容を管理できるといったメリットが多く、昨年後半は仮想通貨技術を使った資金調達「ICO=イニシャル・コイン・オファリング」のニーズが高かった。
年初までは仮想通貨の相場は総じて右肩上がりだったため、ICOブームに乗ってイーサリアムを調達した多くの発行体はすぐには円やドルに換金せず、そのまま保有していたようだ。だが仮想通貨は2月以降、イーサリアムを含めたビットコイン以外の「オルトコイン」主導で総崩れになった。
ICOには発行の枠組みに不透明な部分もあり、投資家の視線は厳しくなっている。「発行体はイーサリアムを慌てて法定通貨に交換しているのではないか」(アルトデザインの藤瀬秀平チーフアナリスト)。しかもイーサリアムには一時、相性の良いスマートコントラクトと呼ばれる自動決済サービスの普及に期待して個人マネーがかなり流れ込んでいた。イーサリアムの売りがほかのオルトコインに波及する負の循環が生じやすい状況だ。
情報サイトのコインマーケットキャップによると、仮想通貨全体の時価総額は30日朝方に2600億ドル台と、ピークだった1月初旬の約8300億ドルの3分の1に減った。オプションや先物市場の動きから判断すると、イーサリアムに対する個人の売りとともに、ヘッジファンドによるビットコイン売りが続いていると受け取れる。
<円建てのビットコインも売られている>
ビットコイン価格は日本時間30日午前に1ビットコイン=6700ドル程度まで下げ、6000ドルを割った2月6日以来の安値を付けた。仮想通貨の取引プラットフォームを提供するレッジャーXのデータによると、きょう期日を迎えるビットコインのプット(売る権利)のオプション料から算出した3月30日終値の予想中心値は6000~7000ドル台。足元の水準は「理論値」に近い水準となっている。
主要な投機資金が離れていった市場が態勢を立て直すのは容易ではない。現在もビットコインなどで含み益を有する投資家は、仮想通貨のブーム前からマイニング(採掘)を積極的に手掛けていた中国勢の一角に限られそうだ。
焦点の1つは決済サービスなどを通じた「実需」の拡大だが、高額の手数料など課題が多い。市場低迷がまだ続くことを覚悟すべきだろう。
【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕
※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。