日経QUICKニュース(NQN)=尾崎也弥
インターネット上の暗号資産(仮想通貨)市場の勢力図が変わっている。先週、ビットコインやビットコイン以外のオルトコインが軒並み下落圧力を受ける中、米ドルとの「固定相場制」で粘り腰を見せたのがテザー(USDT)だ。テザ-はビットコインとの関係の深さから「ビットコインのコバンザメ」と言われることもあるが、ここに来て存在感を増してきた。
情報サイトのコインマーケットキャップによると、ドル建ての時価総額ランキングに変化が起きたのは約1週間前。テザーが有力コインのビットコインキャッシュ(BCH)やライトコイン(LTC)を抜いて4位に躍り出た。その後はBCHと激しく争っており、日本時間午後5時過ぎの時点では5位。
- 暗号資産の時価総額ランキング上位
- 1 ビットコイン 1515.6億ドル
- 2 イーサリアム 195.1億ドル
- 3 リップル 110.8億ドル
- 4 ビットコインキャッシュ 41.7億ドル
- 5 テザー 41.4億ドル
- 6 ライトコイン 35.9億ドル
- 出所:コインマーケットキャップ、日本時間1日午後5時23分時点
テザ-は法定通貨の米ドルとほぼペッグ(連動)し、1ドル=1テザーの等価交換をうたう。今年に入ってからはおおむね1ドル前後で取引されているようで、ライバルの価格下落により相対的にテザ-の優位性は高まったとの解説が可能だ。
8月までのテザ-は発行増に伴って時価総額が増える構図になっていたが、京大大学院の岩下直行教授によると、足元では時価総額が大きく増えるほど発行された形跡はない。テザーの時価総額は23日以降も41億ドル程度でほぼ安定している。前週のテザ-の浮上はLTCやBCHの時価総額の急減によるものと判断して間違いなさそうだ。
京大の岩下教授は「テザーには(決済などに絡む)一定の『実需』がある」とも指摘する。仮想通貨にはマネーロンダリング(資金洗浄)などの違法取引に使われるとの疑念がつきまとい、国際的な規制の包囲網は狭まってきた。特に海外では決済処理などを銀行に断られシステム構築が難しい。そんなとき、交換所が業者向け金融サービス提供会社を利用する際や、交換所間のやり取りで保有するビットコインなどをいったんテザーに交換すれば資金移動がしやすくなるようだ。
LTCやBCHの売りの背景について市場では「仮想通貨取引のプラットフォームが拡充されても機関投資家のマネーが入ってこなかった失望感から投機的な売りが膨らんでいる」(ビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリスト)との声が出ている。オルトコインの取引にはビットコインが証拠金として用いられるケースが多い。オルトの急落がビットコインの需給悪化につながり、ビットコインは日本時間9月30日に1ビットコイン=7730ドル程度と6月上旬以来、約4カ月ぶりの安値水準を付けた。
問題は、テザーの一定割合がビットコインを裏付けにしている可能性が高いことだ。ビットコインが大きく下げればテザーの発行元であるテザー社は損失を抱えかねない。ビットコインのマイニング(採掘)もビットコインが3000ドル台だった昨年末比での採掘難易度の上昇に伴い、電気代などのコストが上がっている。取引量が増えず相場の上値が重いままではマイニング業者の懐はかなり厳しい。テザ-の躍進は危うい土台のうえに成り立っている点を意識すべきだろう。
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