仮想通貨ビットコインの下落が止まらない。日本時間14日未明、ドル建て価格が1ビットコイン=6100ドル程度と2月6日以来、約4カ月ぶりの安値圏に沈んだ。今週に入ってビットコインの価格操作を疑わせるニュースが相次ぎ、投資家はすっかり疑心暗鬼に陥っている。
情報サイトのコインデスクによると、ビットコインが安値を付けたのは日本時間14日の1時30分ごろ。1週間前の直近高値である7700ドル程度からの下げ幅は1600ドル程度に達した。米テキサス大学のジョン・グリフィン教授のチームが13日に発表した論文で、オルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)のひとつであるテザー(USDT)がビットコインの価格操作に使われたと指摘し、売りのきっかけになったとの見方が多い。
※コインデスクより
USDTを通じたコイン価格操作のうわさはだいぶ前から流れていた。米商品先物取引委員会(CFTC)は昨年12月の時点で既に状況を把握し、発行会社のテザー社と香港の仮想通貨交換所ビットフィネックスに召喚状を送っていたという。その後しばらく情勢は膠着していたが前週8日、CFTCはビットコイン先物の価格操作に関しても疑いを提起したと伝わった。ヘッジファンドなどの機関投資家は浮き足だち、先物を中心に現物にも売りを進めた。
テザーは米ドルとの等価交換をうたう。厳しい規制を受けている中国マネーなどがドルをテザーにいったん換え、ビットコインなどを取引する際の有力なツールになってきた。ただ市場はすべてのテザーがドルに裏付けされているのか常に疑ってきた。もしドルの裏付けがない不当な発行により、ビットコインなどへの資金流入につながったとすれば当局も見逃すわけにはいかないだろう。
あるUSDT監視サイトによると3月に3億ドル相当のUSDT発行が示されている。テキサス大が今年3月ごろまでのデータに基づいてまとめた今回の論文でも、大量のUSDTを保有するとされるビットフィネックスなどの香港系マネーがUSDT経由でビットコインを買い、昨年以降のビットコイン高を演出したと指摘する。ビットフィネックスとテザー社の経営陣が共通していることも関係者の疑念を助長している。
相場の下値メドはどのあたりだろうか。カギを握りそうなのは新興国の投資家だ。米国の利上げや欧州中央銀行(ECB)の金融政策の正常化により、新興国からの資金流出と通貨安が引き続き警戒される。アルトデザインの藤瀬秀平チーフアナリストは「新興国から先進国への資金移動が今後も進めば、かつてジンバブエやベネズエラで起きたように、資産防衛を目的とした仮想通貨の買いが強まっておかしくない」と予想する。
仮想通貨のデリバティブ(派生商品)取引のプラットフォームを提供するレッジャーXではここ3日間、6月29日を期日とし7000~9000ドルを権利行使価格とするビットコインのコール(買う権利)の取引が活発になっている。足元の6000ドル台からやや値を戻し、7000ドルを下限とするレンジで落ち着きどころを探る展開に移りそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也弥】
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