QUICK資産運用研究所が投資信託の新しい評価指標「QUICKファンドスコア」を開発した。資産形成に取り組む個人投資家の参考になるよう投信を「長期投資にふさわしいかどうか」の視点で分析し、投資対象の資産が同じグループの中で相対評価し個別ファンドを10段階の「総合スコア」でランク分けする。個別投信のスコアは日経電子版「投資信託」コーナーで確認できる。
■QUICKファンドスコアとは?
QUICKファンドスコアは投信を投資対象の資産別に15のグループに分け、その分類の中でどのランクになるかを多角的な視点で相対評価し、個々のファンドに1~10の総合スコアを付けている。スコアが10に近いほど同じ分類の中でほかのファンドよりも評価が高いことを示す。対象資産別のグループ分けは以下の15分類。
QUICK投信分類
株式(4分類)
国内株式
先進国株式
新興国株式
グローバル株式
債券(6分類)
国内債券
先進国債券
(投資適格)
先進国債券
(非投資適格)
先進国債券
(格付混在)
新興国債券
グローバル債券
REIT(2分類)
国内REIT
海外REIT
その他(3分類)
転換社債
コモディティ
バランス
※QUICK投信分類はファンドを投資対象地域や資産などで区分したQUICK独自の分類。
■5つの項目で多角的に評価
長期投資に向く投信かどうかは、以下の5つの項目で評価した上で総合スコアを算出している。
項目1 リスク
運用方針に見合ったリスクを取っているか
項目2 リターン
リスクに見合ったリターンを上げているか
項目3 下値抵抗力
下げ相場での価格の落ち込みが小さいか
項目4 コスト
コストに見合ったリターンを上げているか
項目5 分配金健全度
元本を取り崩して分配していないか
その上で、長期投資には運用実績を積み重ねた投信の中から選ぶのが望ましいとの考えに基づき、設定からの経過年数が長いファンドほどスコアが高くなるよう調整している。スコアの付与対象は、設定後3年以上(インデックス型は10年以上)が経過した投信。
■スコアの違う3ファンドを比較
実際に運用されている「国内株式型」の投信のうち、総合スコアが10、5と3のファンドをピックアップして比べてみたい(図1参照)。総合スコアが10の「ファンドA」は5項目とも評価が高く、各項目を点数化したレーダーチャートが正五角形に近い。これに対し、ファンドBやファンドCは形が小さくていびつだ。
(図1)スコアの違う3ファンドを比較



ファンドAのレーダーチャートを見ると、特に評価の高い項目が「リターン」と「分配金健全度」。リターンは過去の運用成績で評価し、長期で安定的にリターンを上げているファンドほどスコアが高くなる。分配金健全度は分配金がどれだけ運用益から支払われたかを比べ、分配金合計のうち運用益に基づく普通分配金の割合が大きいほど高い評価になる。
さらに「下値抵抗力」の項目では基準価額の一時的な落ち込みが小さいファンド、「リスク」では運用方針に沿ったリスクが取られているファンドほど評価が高くなる。一方、五角形の凹みがやや目立つのは「コスト」。投資家が支払う信託報酬と購入時手数料の合計が割高だと評価は低くなる。
■ファンドA、B、Cの投資成果は?
実際にファンドA、B、Cにそれぞれ過去10年間投資した運用成果を比べてみた(図2参照)。10年かけて合計100万円を積立投資した場合(毎月末に8333円積み立てたと想定)、ファンドAは239.8万円の利益が出たのに対し、ファンドBの利益は126.5万円、ファンドCは52.3万円だった。
(図2)3ファンドの運用成果
各ファンドの運用損益
積立投資 | 一括投資 | |
---|---|---|
ファンドA | 239.8万円 | 173.8万円 |
ファンドB | 126.5万円 | 84.0万円 |
ファンドC | 52.3万円 | ▲1.7万円 |
※積立投資は2007年10月~2017年9月の毎月末に8333円ずつ合計100万円購入した場合、一括投資は2007年10月末に100万円購入した場合。
10年前に一括投資した場合はファンドAが173.8万円、ファンドBは84.0万円の利益が出たが、ファンドCは1.7万円の損失だった。同じスコアでも個々のファンドで運用成果は異なるが、今回のシミュレーションで比べた3ファンドは積立投資でも一括投資でも利益が最大だったのはスコアが10のファンドAだった。
従来のファンド評価は運用効率を示す「シャープレシオ」と呼ばれる指標を使って、3年や5年など一定の評価期間ごとにランク分けするのが一般的だが、QUICKファンドスコアはコストや分配金健全度といった投資家目線の評価軸を取り入れたのが最大の特徴。評価期間を区別しないで、一つのファンドに一つの総合スコアが付いているので分かりやすい。これから資産形成に取り組む個人投資家は、このスコアも参考にしながら自分に合った投信を選びたい。