「とにかく当社がなにをしている会社なのか、知ってもらいたい」と語るのは、オエノンホールディングス経営戦略企画室マネージャーの佐藤隆史氏。同社は株主優待制度で、市販されていない株主優待限定の清酒を提供して話題となった。それを可能にしたのは、合同酒精や福徳長酒類なども抱える持株会社だからだ。銘柄コード2533と聞けば、オールドファンなら合同酒精と記憶しているかもしれない。
同社が商号変更したのは持ち株会社制に移行した2003年。株式市場では安定配当を続ける「優等生」ながら、「特に若い世代への認知度はなかなか上がらなかった」(佐藤氏)。15年の社長交代を機にIR活動を強化、株主への感謝と、オエノンを魅力ある投資対象として認知してもらい、グループの事業に対する理解を深めてもらうことを目的として株主優待を実施している。
優待を実施した15年12月期以降、個人株主は着実に増加。安定株主の確保に一定の役割を果たしている。優待品が届いて初めて同社のお酒を口にした株主も多いようで、優待品を意識していなかった株主からも概ね好評と聞く。「優待商品の内容を他社と比較するつもりはない」(同)というが、「酒女神(オエノ)」と名付けた優待品の出来栄えには自信を持っているようだ。ちなみに、「オエノ」は、ギリシャ・ローマ神話において酒神「バッカス」にすべてのものをお酒に変える力を授けられた、伝説の女神である。
一方で、機関投資家やお酒を飲まない株主向けには、日本赤十字社への寄付も選択できるように配慮している。寄付金の総額はホームページなどで公開しているが、「社会貢献につながる有意義な方法」(同)になっている。
「当社は、社長がオープンな性格でIR活動に積極的です。ホームページなどからご応募いただいた個人株主の方を抽選で当社施設(牛久シャトー)にお招きし、社長と直接対話していただく『社長と語る会』はおかげさまで好評をいただいています」(同)。抽選倍率は3~4倍の人気イベントなのだという。
オエノンホールディングスは配当利回りが市場平均に比べて高めに推移してきた。しかし、バブル期の高値を知る30年ほど前からの株主にすれば、現状の株価水準は満足できるものではない。当時の水準に少しでも近づくためには、更なる業績の拡大を目指し、それに伴っていかに株価を上昇させるかが正攻法だろう。加えて、知名度のアップも課題だ。「株主から『旧社名の合同酒精に戻したほうが良いのでは』という声も寄せられた」(同)という。
顧客層の高齢化に対しては、新たな顧客の掘り起こしを図っており、若い世代にしそ焼酎「鍛高譚」などの商品をアピールする活動を積極的に展開している。「収益を上げることはもちろんだが、「オエノン」=「鍛高譚」などの商品と認知していただけるよう努力し、株価上昇につなげていきたい」(同)と意気込みを語ってくれた。
≪対象株主≫
毎年12月31日現在の当社株主名簿に記載された株主のうち、
1,000株(単元株式数100株×10単元)以上を保有している株主。
≪優待内容≫
次のいずれか1つを選択。
(1)株主限定のオリジナル商品
※オリジナル商品は、特製非売品。
(2)日本赤十字社への寄付
≪贈呈時期≫
翌年5月下旬から6月上旬の発送を予定。
~ 2016年12月期の株主優待 ~
(1)当社オリジナル清酒セット「酒女神(オエノ)」300ml 2本
(株主限定 特製非売品)
「酒女神(オエノ)」は酒類のため、未成年の株主は選択不可。
(2)日本赤十字社への寄付 1,500円
酒類事業が主力。このほか、酵素医薬品、加工用澱粉、不動産などの事業を展開している。
酒類事業では、傘下の合同酒精、福徳長酒類などの酒造メーカーを中心とした事業会社を核にビジネスを行う。「鍛高譚(たんたかたん)」、「ビッグマン(焼酎)」、「博多の華(焼酎)」、「富久娘(清酒)」などのブランドを持つ。その他、酒類用・工業用アルコール、調味料、食品を取り扱うほか、国指定重要文化財である牛久シャトーでは、ワイン、クラフトビールの醸造とレストラン経営も行っている。酵素医薬品事業では、国内外で大きなシェアを持つ乳糖分解酵素「ラクターゼ」などの酵素、原薬、診断薬のほか、生産支援ビジネスに力を入れている。不動産事業では、不動産の売買、賃貸などを行う。
1924年、北海道内の焼酎製造会社4社(神谷酒造 旭川工場、東洋酒精醸造、北海道酒類、北海酒精)が合併し、旭川市に合同酒精を設立。2003年、持株会社制に移行し、オエノンホールディングスに商号変更、新たに子会社合同酒精を設立。
(提供:QUICK企業価値研究所)
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