業績上方修正ペースが再加速…全産業DIは4か月ぶりに改善
アナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(5月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス16と、前月に比べて5ポイント改善しました。今年2月以降は3か月連続でプラス幅が縮小していましたが、ようやく底を入れ、上昇に転じたようです。株式市場の企業業績に対する期待が持ち直し始めました。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
DIのプラス幅が拡大したことは、アナリストによる業績上方修正のペースが加速していることを表します。
製造業と金融業が持ち直す、非製造業は引き続きしっかり
産業別でみると、非製造業が微増(プラス14→プラス15)にとどまったのに対し、製造業は前月調査分のプラス7からプラス12に上昇しました。また金融がプラス24からプラス57へ大幅上昇となり、全産業の数字を押し上げています。
製造業のコンセンサスDIが上昇したのは、5月中に進んだ円安の影響もありそうです。ドル/円は、5月1日に1ドル=119円台だったのが、5月下旬には一時、1ドル=124円台まで円安が加速しました。円安が進めば、輸出関連企業にとっては為替差益が見込め、それが業績を押し上げる要因になります。
業種別でみると、輸送用機器、食料品がマイナス幅を縮小させ、非鉄金属が大幅プラスに転じました。金融については、銀行もプラス幅を広げていますが、「その他金融」が大幅にプラス幅を拡大しました。一方、医薬品がマイナス幅を大きく拡大。鉄鋼が大幅マイナスに転じました。
今後の国内景気を見るうえで、さらなる円安の進行が個人消費に及ぼす影響は無視できないでしょう。今年の春闘では大手企業を中心にベースアップが行われましたが、今後、給料の引き上げが、円安にともなう国内物価の上昇に追い付けなければ、国内個人消費が落ち込む恐れがあります。
インバウンド需要は堅調ですが、国内個人消費の落ち込みを補えるとは、まだ言い切れません。2014年中の訪日外国人旅行者数は1300万人。2014年中の日本の個人消費は推計で293兆円とされる一方、2014年中の訪日外国人が、日本滞在中に使った旅行消費額は2兆305億円にとどまっています。もちろん、これらの数値は海外の景気動向に左右される面もあります。
ベネッセHDの先行きに厳しい視線
予想純利益の上方修正率(3カ月前比)ランキング上位5社は以下です。
銘柄名 | 修正率 |
出光興産(5019) | 53.98% |
任天堂(7974) | 40.97% |
JDI(6740) | 40.94% |
長谷工(1808) | 35.20% |
キリンHD(2503) | 31.65% |
4月調査分で上位5社に入っていた企業で、5月調査分でも修正率上位ランキングに5位までに入ったのはJDIのみです。また出光興産は原油価格の急落で、2015年3月期決算が赤字に転落。今期は原油価格が上昇しつつあることも踏まえて、大幅な業績改善が見込まれています。
一方、下方修正率ランキング上位5社は、次のようになりました。
銘柄名 | 修正率 |
ベネッセHD(9783) | ▲80.65% |
資生堂(4911) | ▲45.49% |
関西電(9503) | ▲28.51% |
武田(4502) | ▲22.53% |
国際石油開発帝石(1605) | ▲21.85% |
下方修正率トップとなったベネッセHDは、2015年3月期が最終赤字に転落しました。、2016年3月期に実施されるテコ入れ策などを受けた業績回復が期待されるところですが、市場は業績回復の先行きに厳しい見方をしているようです。