市場の業績期待は底堅い…全産業DIはプラス幅が微増
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(8月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス16と、前月に比べて1ポイント改善しました。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
DIのプラス幅が増加したことは、アナリストによる業績見通しの上方修正ペースが加速していることを表します。
「機械」「鉄鋼」「卸売」などが悪化…中国懸念の影響か
製造業のDIがプラス6からプラス10に改善、金融もプラス60からプラス71に改善したことが、全体のDI改善に貢献しました。一方、非製造業はプラス17と前月から横ばいと、今年の改善基調が鈍っています。
製造業では「輸送用機器」が改善(プラス7⇒プラス27)しているほか、食料品や化学、医薬品の改善が目立ちました。一方「機械」がマイナス、つまり下方修正優勢に転じています(プラス43⇒マイナス5)。「鉄鋼」のマイナス幅も拡大(マイナス40⇒マイナス60)しました。
非製造業も「卸売」がマイナスに転じた(プラス10⇒マイナス11)ほか、不動産が伸び悩みました(プラス80⇒プラス45)。
8月後半の株式市場自体は波乱含みの展開となりましたが、コンセンサスDIの数値を見る限り、全体の企業業績期待は底堅く推移しています。とはいえ、業種によっては、中国経済への懸念が影を落としていると考えられます。
これから先を考えた場合、中国経済のスローダウンが気になるところです。中国政府としては、経済成長率7%を死守したいところですが、その可能性が徐々に低下している感があります。また、天津の爆発事件によって、中国でビジネス展開をしていた外国企業が、さらに中国ビジネスにコミットすることを敬遠する恐れもあり、その動向次第では、中国の経済成長率がさらに低下することも考えられます。
上方修正率の首位はアダストリア、下方修正率は資源系目立つ
アナリストによる業績予想の平均値「QUICKコンセンサス」について、3か月前と比べた純利益の上方修正率が大きな銘柄のうち、上位5銘柄をピックアップしてみました。
銘柄名 | 修正率 |
アダストリア(2685) | 87.45% |
協和発酵キリン(4151) | 28.31% |
三井化学(4183) | 27.68% |
資生堂(4911) | 24.50% |
帝人(3401) | 22.88% |
一方、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少)
銘柄名 | 修正率 |
UACJ(5741) | ▲50.81% |
LIXILグループ(5938) | ▲39.65% |
昭和シェル石油(5002) | ▲33.01% |
昭和電工(4004) | ▲29.88% |
JXホールディングス(5020) | ▲23.38% |
純利益の上方修正率が最も大きかったのはアダストリア(2685)でした。同社はショッピングセンター内を軸にカジュアル衣料店を展開している会社で、2013年の商号変更前はポイントと名乗っていました。下方修正率トップのUACJ(5741)は古河スカイと住軽金が統合してできたアルミ圧延最大手です。
アダストリアは2014年2月決算で最終赤字になりましたが、2015年2月決算で黒字転換。2016年2月決算では黒字幅が大幅に拡大する見通しです。出店抑制、シンガポール店の完全撤退など、選択と集中を進めています。