市場の業績期待は減速…全産業DIはプラス幅が今年最低
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(9月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス10と、前月に比べて6ポイント悪化しました。
DIのプラス幅が減少したことは、アナリストによる業績見通しの上方修正ペースが減速していることを表します。プラス幅は今年の最低水準になりました。それだけ、株式市場の業績期待が弱まりつつあることを意味しています。業績への期待感の弱まりは、株式相場においても様子見ムードを強める材料となりそうです。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
製造業の落ち込み目立つ
注目すべきは製造業のDIがマイナス5(前月はプラス10)と、昨年10月以来のマイナスに転落したことです。証券会社のアナリストの業績予想が下方修正優勢になったことを示しています。製造業の業績に対する期待感が剥落しているのが分かります。
今年に入ってから製造業DIは徐々に落ち込んできましたが、特に9月は中国の株価低迷と景気懸念に加え、円安期待が後退し、輸出色の強い製造業の業績にとっては逆風の月となりました。
DIを業種別に見ると、「電機」「機械」「非鉄金属」「鉄鋼」と世界景気の影響を受けやすい業種がマイナス幅を拡大。プラス圏を維持していた「輸送用機器」もマイナス4に転落しました(前月はプラス27)。輸出型企業に対する風当たりは全体に強くなっています。
実際、ここ数日、中国関連とされていた機械・鉄鋼企業では、懸念材料が相次いでいます。日立建機(6305)は早期退職者の募集を始め、人員削減によってコスト構造の改革を推進すると発表しました。鉄鋼と建機を主力とする神戸製鋼所(5406)も2016年3月期の連結営業利益を下方修正し、一転して営業減益になる見込みだと発表しました。
一方、DIのプラス幅が拡大したのは、非製造業に分類される「建設」「情報・通信」「小売」の3業種のみです。非製造業全体のDIはプラス25と、前月に比べて8ポイント改善。全体を支える格好となっています。
鉄鋼関連が下方修正率上位に
アナリストによる業績予想の平均値「QUICKコンセンサス」について、3か月前と比べた純利益の上方修正率が大きな銘柄のうち、上位5銘柄をピックアップしてみました。
銘柄名 | 修正率 |
アダストリア(2685) | 112.77% |
アルパイン(6816) | 88.93% |
九州電力(9508) | 36.92% |
味の素(2802) | 31.19% |
三井化学(4183) | 27.04% |
一方、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少)
銘柄名 | 修正率 |
ニチイ学館(9792) | ▲64.19% |
日新製鋼(5413) | ▲56.55% |
UACJ(5741) | ▲49.18% |
JXホールディングス(5020) | ▲38.64% |
日本板硝子(5202) | ▲37.41% |
アダストリアは業績好調。2016年2月期には増配も予定されています。アルパインは保有株式の売却による特別利益の計上が期待されていますが、中国向け輸出の落ち込みが業績に悪影響を及ぼす懸念が残っています。
一方、高齢社会で注目される介護ビジネスのニチイ学館は目下、人材不足の問題を抱えており、それが業績の圧迫につながっています。下方修正率の大きい銘柄上位は鉄鋼が多くを占めており、中国の景気低迷による鋼材価格の下落が影響していると思われます。