業績期待指数は2か月連続で悪化
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(10月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでプラス3と、前月に比べて7ポイント悪化しました。DIの悪化は2か月連続です。
DIのプラス幅が減少したことは、アナリストによる業績見通しの上方修正ペースが減速していることを表します。プラス幅は今年の最低水準になりました。それだけ、株式市場の業績期待が弱まりつつあることを意味しています。業績期待の鈍化を受けて、株式相場も様子見ムードが持続しそうです。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
製造業の業績懸念が強まる、非製造業への期待感も鈍化
DIを製造業、非製造業に分けて見てみましょう。
製造業のDIは前月のマイナス5からマイナス12に悪化しています。9月以降、製造業の業績期待が大きく後退しているのが分かります。ドル高が頭打ちになったこと、中国経済の不透明感が強まったことが、業績の上方修正が見込めなくなった原因でしょう。自動車メーカーを含む「輸送用機器」がマイナス4からマイナス7、「電機」がマイナス23からマイナス41と、主力の輸出企業が軒並み悪化しています。
これまでDI全体を下支えしてきた非製造業もプラス25からプラス20に悪化。非製造業のDIが悪化するのは9カ月ぶりです。
電力株の上方修正目立つ
アナリストによる業績予想の平均値「QUICKコンセンサス」について、3か月前と比べた純利益の上方修正率が大きな銘柄のうち、上位5銘柄をピックアップしてみました。
銘柄名 | 修正率 |
アダストリア(2685) | 69.83% |
ファンケル(4921) | 54.99% |
九州電力(9508) | 46.54% |
東京電力(9501) | 33.10% |
トヨタ紡織(3116) | 28.61% |
一方、予想純利益率の下方修正率(3か月前比)ランキング上位5社は、次のようになりました。(▲は減少)
銘柄名 | 修正率 |
ニチイ学館(9792) | ▲66.97% |
日新製鋼(5413) | ▲62.18% |
神戸製鋼(5406) | ▲59.26% |
UACJ(5741) | ▲51.98% |
アドバンテスト(6857) | ▲51.10% |
引き続きアダストリアの上方修正率がトップ。同社は業績好調に加え、10月30日の引け後に発行済株式数の0.82%を上限とする自社株買いを発表しており、株価にとっては好材料になっています。また九州電力や東京電力などは、原油価格の下落が発電コストを抑制することから、業績にとってプラスに働きました。