業績期待指数は3カ月連続の悪化、ついにマイナスに転じる
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(11月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス3と、前月に比べて6ポイント悪化しました。DIの悪化は3か月連続で、マイナスに転じるのは2014年10月以来、約1年ぶりです。
DIがマイナス幅に転じたことは、アナリストによる業績見通しが下方修正優勢に転じたことを表します。それだけ、株式市場の業績期待が弱まりつつあることを意味しています。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
「過去最高益水準」の企業業績に物足りなさを感じる市場
今年6月のプラス17をピークにして、徐々に低下傾向をたどってきたQUICKコンセンサスDIが、ついにマイナスになりました。
確かに10月の日本の完全失業率は3.1%で、20年ぶりの低水準になりましたが、7~9月の国内総生産は2期連続のマイナスとなり、国内消費の改善も力強さに欠ける状況です。また、視点をグローバルに向けると、米国経済は堅調ですが、新興国経済の成長率が中国を中心に急減速しており、それが企業業績の足かせになっています。
メディアで報じられている通り、今期通期の企業業績は過去最高益水準にありますが、アナリストの業績予想が下方修正優勢ということは、市場の期待が高すぎたと考えられそうです。来期以降の企業業績についても弱気の見方が広まっており、今後の株価に及ぼす影響が懸念されます。
製造業のDIは前月のマイナス12からマイナス18へ悪化し、2013年1月以来の水準に落ち込んでいます。9月以降、製造業の業績期待が大きく後退しているのが分かります。市場では外需への不安から「鉄鋼」(マイナス43→マイナス100)や「機械」(マイナス24→マイナス34)といった世界景気に敏感な業種がマイナス幅を広げたほか、「化学」がプラス幅を縮めました(プラス33→プラス8)。鉄鋼の急激な悪化は、中国をはじめとする新興国経済のスローダウンが、業績に響いているものと思われます。
DI全体を下支えしてきた非製造業もプラス20からプラス15に悪化しました。
資源関連銘柄の業績下方修正懸念強まる
3か月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。3か月前比で純利益の下方修正率が最も大きかったのは、不正会計問題が発覚した東芝でした。神戸製鋼をはじめ、出光興産、JXホールディングス、三井金属など、鉄・非鉄および資源関連の業績下方修正が顕著という結果になりました。
まず、予想純利益率の上方修正率(3か月前比)の高かった上位5銘柄です。
銘柄名 | 修正率 |
大林組(1802) | 49.85% |
トヨタ紡織(3116) | 41.20% |
アダストリア(2685) | 39.86% |
鹿島建設(1812) | 35.48% |
ヤマダ電機(9831) | 34.45% |
一方、下方修正率ランキングの上位5社は、次のようになりました。(▲は減少)
銘柄名 | 修正率 |
東芝(6502) | ▲78.09% |
出光興産(5019) | ▲68.33% |
神戸製鋼(5406) | ▲64.44% |
JXホールディングス(5020) | ▲63.25% |
三井金属(5706) | ▲60.61% |