業績期待指数2カ月連続マイナス
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2015年12月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス3と2カ月連続のマイナスとなりました。2カ月連続のマイナスは2014年5~7月(3カ月連続マイナス)以来、約1年半ぶりです。
12月のDIは11月と同じマイナス3でしたが、DIのマイナスはアナリストによる業績見通しが下方修正優勢に転じたことを表し、株式市場の業績期待が弱まりつつあることを意味します。今回の特徴は製造業DIのマイナス幅がやや改善する一方、非製造業DIのプラス幅が縮小した点です。全体のDIは変わらずでしたが、これまでDI全体を下支えしてきた非製造業セクターに対する先行き警戒感が示唆されたともいえる状況です。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがプラスということは、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
非製造業の業績期待の悪化が顕著に
全産業ベースのDIは2カ月連続のマイナスとなりましたが、今後の注目点としては、マイナス幅がさらに拡大するのか、それとも底を打って徐々にプラスに転じていけるかどうかでしょう。
12月は製造業DIがマイナス15と4カ月連続のマイナスとなりましたが、11月(マイナス18)からマイナス幅が縮小しました。一方、非製造業DIはプラス12となったものの、3カ月連続でDIは悪化しました。
全体のDIが底堅さを示すには製造業の業績懸念に底入れ感が広がると同時に非製造業の業績期待が続く必要がありますが、現状、景気にとってプラスの材料はさほど多くありません。2016年3月期は過去最高益を更新する見通しの企業が多いのは事実ですが、投資家の関心はすでに来期(2017年3月期)に向かいつつあります。
これ以上の米ドル高・円安は見込めるのか、そもそも米国景気は盤石なのか、原油価格急落による新興国・資源国景気の影響はどうなのか、という外部要因とともに、国内の個人消費は上向くのか、デフレからの完全脱却は可能なのか、といった国内要因にも目を向けていく必要があります。
現状、いずれの要因についても、追い風が吹いているとは言えない部分が多く、2016年の景気は踊り場を迎える可能性も意識されます。それが企業業績に反映されるリスクもそろそろ想定しておく必要がありそうです。
機械や電機への業績懸念続く 建設、小売、不動産は明るい見通し
DIを業種別に見ると、16業種中、上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回り、DIがプラスになっている業種は9業種。一方、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回り、DIがマイナスになっている業種は6業種、変わらずが1業種でした。
中身を細かく見ると、機械や電機のDIはマイナス幅が拡大し、製造業DIの重荷になりました。半面、鉄鋼や非鉄金属はマイナス幅が縮小したことで、製造業全体のDIの改善につながりました。
非製造業では情報・通信がプラスとなったものの4カ月ぶりに悪化、卸売はマイナス幅が拡大しました。一方、建設、小売、不動産などはいずれもプラス幅が拡大。政府・日銀の政策期待などを背景にこうした明るい業種の業績期待が継続するかが先行きの全体業績を占う上で重要なカギの一つになりそうです。
小野薬に業績期待、板硝子は下方修正懸念
3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。3カ月前比で純利益の上方修正率が最も大きかったのは、小野薬品工業でした。免疫を利用した新規がん治療薬である「オプシーボ」の販売が好調で、業績が大幅に上方修正されました。一方、下方修正率が最も大きかったのが日本板硝子。スマートフォン液晶に使用する薄板ガラスの価格競争激化が業績低迷への警戒感につながったようです。
予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。
銘柄名 修正率
小野薬(4528) 101.27%
戸田健(1860) 54.92%
ヤマダ電(9831) 43.09%
トヨタ紡織(3116) 37.27%
大林組(1802) 28.74%
一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。
銘柄名 修正率
板硝子(5202) ▲50.96%
アドバンテ(6857) ▲49.38%
セガサミーHD(6460) ▲49.03%
川崎船(9107) ▲46.82%
ミツミ(6767) ▲45.23%