全産業DIマイナス30、3年4カ月ぶり低水準
株式市場のアナリストによる業績予想の方向感を示す「QUICKコンセンサスDI」(2016年4月末時点)は、金融を含めた全産業ベースでマイナス30となりました。前月と同じだったものの厳しい収益環境にあるのは変わらず、2012年12月(マイナス32)以来の低水準となりました。
QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。
DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
4月の日銀金融政策決定会合では、事前に噂されていた、もう一段の金融緩和は行われず、市場では「ネガティブサプライズ」となりました。当面、マイナス金利の浸透度合いを見極めるという日銀のスタンスが明確になったことから、ドル円は一時1ドル=106円台まで円高・ドル安が進み、かつ日経平均株価も急落しました。各種経済指標を見ても、個人消費関連は停滞感が強く、企業の生産・出荷は一進一退が続いています。景気の先行き不透明感に加え、円が急伸したことから、企業業績の悪化懸念が強まっています。
鉄鋼や輸送用機器DIが悪化 プラス維持は建設・不動産のみ
業種別DIをみると、16業種中、かろうじてプラスを維持しているのは「建設」と「不動産」の2業種のみ。とはいえ、DI値は建設が低下、不動産は変わらずで、さえない状態です。またDI値が0の業種は「医薬品」と「その他金融」の2業種で、医薬品は3月のマイナス15から0へ改善。一方、その他金融は25から0へ悪化しました。
残りの業種はすべてDIがマイナスで、それぞれの動向は以下のようになります。
・マイナス値が悪化 ⇒「食料品」「化学」「鉄鋼」「非鉄金属」「輸送用機器」「卸売り」
・マイナス値が横ばい⇒「情報・通信」
・マイナス値が改善 ⇒「機械」「電機」「小売り」「サービス」「銀行」
鉄鋼や非鉄金属、輸送用機器など海外経済の減速や円高進行が業績面での重荷になりやすい業種の見通し悪化が顕著となっています。
内閣府が発表した「平成27年度企業行動アンケート」によると、上場製造業の採算レートは1ドル=102円30銭となっており、現在の水準であれば採算割れにはなりません。しかし、4月1日に発表された日銀短観によると、大企業・製造業の2016年度の想定為替レートは1ドル=117円46銭。106円前後という水準が続けば、業績の下方修正が相次ぐ恐れがあります。
イオンの見通し悪化が目立つ
3カ月比で純利益の上方修正率、下方修正率が大きな銘柄のうち、いずれも上位5銘柄をピックアップしてみました。業績の下方修正率が最も大きいイオンは、アナリストの業績予想で「弱気」の見方が「強気」を上回っています。
予想純利益率の上方修正率(3カ月前比)の高かった上位5銘柄は以下の通りです。
銘柄名 修正率
TDK(6762)・・・・・・・・・・64.45%
小野薬品工業(4528)・・・・・・・60.97%
日本板硝子(5202)・・・・・・・・59.82%
鹿島(1812)・・・・・・・・・・・32.30%
中部電力(9502)・・・・・・・・・31.49%
一方、下方修正率ランキングの上位5銘柄は以下の通りです(▲は減少)。
銘柄名 修正率
イオン(8267)・・・・・・・・・▲65.16%
ジャパンディスプレイ(6740)・・▲48.41%
新光電気工業(6967)・・・・・・▲47.58%
ファーストリテイリング(9983)・▲46.68%
三井金属(5706)・・・・・・・・▲44.31%