アナリストによる主要企業の業績予想の変化を示す「QUICKコンセンサスDI」(8月末時点)は、鉄鋼や輸送用機器など製造業に対する強気見通しが増加したことを受けて、全産業ベース(金融含む)のDIが前月比12ポイント改善してプラス21となりました。
※QUICKコンセンサスDIとは・・・アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
鉄鋼業に対して一転強気見通し
製造業DIは前月比21ポイント改善のプラス30でした。なかでも鉄鋼セクターのDIが前月のマイナス25からプラス83と強気見通しに転じました。アナリストは新日鉄住金(5401)、JFEホールディングス(5411)、神戸製鋼所(5406)の鉄鋼大手3社の2018年3月期連結純利益の見通しを足元で引き上げています。「鉄冷え」と呼ばれた厳しい経営環境から脱し、採算改善期待が膨らんでいるようです。
そのほか、輸送用機器セクターのDIが前月のマイナス29からプラス10と強気見通しが増えています。海外向け需要が好調なほか、トランプ政権が7月下旬、国境税の導入を断念したことも国内自動車メーカーにとってはプラス材料と受け取られているのかもしれません。
なお、算出対象の16業種中でDIがプラス(上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回る)だった業種は14業種。一方、マイナス(下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回る)は2業種でした。
東芝への業績上方修正期待が強まる
また、個別銘柄を対象に3カ月前の予想純利益と比較して上方修正率、下方修正率がそれぞれ大きな銘柄をピックアップしてみました。最も上方修正率が大きかった銘柄は東芝(6502)でした。同社は半導体メモリー事業の売却を巡り、対立してきた協業先の米ウエスタンデジタル(WD)と歩み寄りを見せたことも影響しているかもしれません。
半面、最も下方修正率が大きかったのは、アスクル(2678)でした。今年2月に物流センターの倉庫火災の影響で個人向けネット通販事業の出荷が遅れ、販売が低迷していることを織り込んでいるのかもしれません。