アナリストによる主要企業の業績予想の変化を示す「QUICKコンセンサスDI」(9月末時点)は、輸送用機器や医薬品、化学など製造業に対する強気見通しが増加したものの、非製造業の建設や不動産に対して弱気見通しが増加し、全産業ベース(金融含む)のDIでは前月比と変わらずのプラス21となりました。
※QUICKコンセンサスDIとは・・・アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から、「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出されます。DIがマイナスということは、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っているということです。5社以上のアナリストが業績を予想する銘柄を対象にしているため、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかを判断するうえで参考になります。
製造業は強気も、建設や不動産など非製造業が弱気
製造業DIは前月比3ポイント改善のプラス33でした。なかでも輸送用機器セクターのDIが前月のプラス10からプラス28と強気見通しが増えました。足元でアナリストは、インドで生産が伸びているスズキ(7269)や、8月の国内販売が前年同月比で2ケタ増だった三菱自動車(7211)など自動車メーカーの予想純利益を引き上げています。米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内に追加利上げに動くとの観測から、日米金利差による円安・ドル高が続くとの見方も同セクターの強気見通しの背景にありそうです。
そのほか、医薬品セクターのDIは前月のプラス6からプラス23、化学セクターは前月のプラス53からプラス62と強気見通しが増えています。
一方、前月比6ポイント低下のプラス8となった非製造業では、不動産セクターのDIが前月のプラス56からプラス7、不動産セクターは前月のプラス27から0にまで落ち込みました。
なお、算出対象の16業種中でDIがプラス(上方修正銘柄が下方修正銘柄を上回る)だった業種は12業種。マイナス(下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回る)はなし、変わらずは4業種でした。
東芝への業績上方修正期待が続く
個別銘柄を対象に3カ月前の予想純利益と比較して上方修正率、下方修正率がそれぞれ大きな銘柄をピックアップしてみました。最も上方修正率が大きかった銘柄は東芝(6502)でした。同社は半導体メモリー事業を「日米韓連合」に売却する方針を決議したと発表。財務体質改善の期待が高まっているようです。
半面、最も下方修正率が大きかったのは、北陸電力(9505)でした。同社は、石油火力発電の増加による燃料費の増加などから、2017年4~9月の連結純利益が前年同期比88%減の5億円程度になりそうだと発表しました。
<上方修正率の大きい銘柄トップ5>
▽3カ月前比で純利益の上方修正率の大きい銘柄上位
コード 銘柄名 予想純利益(百万円) 修正率(%)
9月末 6月末
1 6502 東 芝 663,000 285,417 132.29
2 7752 リコー 13,755 8,390 63.95
3 9107 川崎船 11,000 6,990 57.37
4 5411 JFEHD 141,575 98,417 43.85
5 5406 神戸鋼 39,900 29,390 35.76
<下方修正率の大きい銘柄トップ5>
▽3カ月前比で純利益の下方修正率の大きい銘柄上位
コード 銘柄名 予想純利益(百万円) 修正率(%)
9月末 6月末
1 9505 北陸電 5,200 8,300 -37.35
2 9984 ソフトバンクG 494,608 652,245 -24.17
3 9509 北海電 13,750 17,183 -19.98
4 9064 ヤマトHD 18,430 22,160 -16.83
5 4751 サイバエージ 14,498 17,343 -16.40
※9月29日時点。最終赤字の銘柄は除く。直近3カ月前とも5社以上のアナリストが業績予想を出している銘柄が対象