日本株市場で裁定買い残がじわり増加基調にある。2017年12月29日時点の裁定取引に伴う現物株の買い残高は2週連続で増加。前の週に比べて230億円増の3兆2311億円で、15年12月30日時点以来2年ぶりの高水準だ。昨秋以降、日本株の上昇に伴って買い残が増えた様子が鮮明で「仮需」による押し上げ効果も大きいと言える。
そもそも裁定買いとは、株価指数先物が原資産である株価指数と価格がかい離した際に発生するトレードのポジションの積み上がりを指す。株価指数より先物の価格が高い場面では、先物を売ると同時に指数の構成銘柄の全てに買いを入れる。取引が成立した時点で価格の「さや」の分が利益になると同時に、その後に相場がどう変動しようがその利益が変化することもない。
裁定取引は証券会社の自己売買部門が中心となっている。取引の規模が大きいだけにプレーヤーは限られる。また、証券会社としては取得した現物株をさらに貸し株などに回せる利点もある。定期的に外資系証券会社が大株主名簿に名を連ねるのはこのためだ。純投資とは一線を画すポジションでもある。
裁定買いが仮の需要とされるのは、現物株を買うにあたって証券会社が短期金融市場から資金を調達するためだ。短期間のうちにポジションを解消する必要がある。株価指数先物・オプションが清算を迎え、特別清算指数(SQ)の算出日に反対売買が入る傾向がある。
足元で裁定買い残が膨らんでいるのは、先物買いが先行し株価指数との価格差に開きが出た場面が多かったためと考えられる。ただ、アベノミクス相場以降で裁定買い残の平均は約2.5兆円。3兆円を超えるとポジションのが膨らんできた印象もある。
また裁定買い残が安定的に3兆円の大台を維持した時間はほとんどない。仮需のポジションとしてはそろそろ「限界」も意識されるところ。ポジション解消の可能性が高まる3月のSQに関心が向かう。
(QUICKデリバティブズコメント)
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