米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が30日の大引け後、2017年10-12月期(4Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、調整後の1株当たり利益(EPS)の市場予想の平均値(18社、25日時点)は前年同期比2.2倍の0.11ドルで、3四半期ぶりに減益が見込まれている。
昨年12月17日にビットコインが19783.21ドルまで上昇して史上最高値を更新するなど、期間中は多くの仮想通貨が急騰していた。いわゆる画像処理半導体(GPU)でマイニング関連需要が大きければポジティブ・サプライズがありそうだが、市場では慎重な見方が出ている。
【10-12月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高(営業収益) 15億4000万ドル(+9.8%)
・EPS(1株利益) 0.11ドル(+2.2倍、Non-GAAP)
米調査会社バーンスタイン・リサーチは23日付のリポートで、4QのAMDのEPSを0.04ドル、2018年1-3月期(1Q)に関しても0.04ドルと見込んだ。各調査会社の調べで4Qのパソコン出荷が良好なことなどを踏まえたもの。仮想通貨の急騰の影響については、「少なくともGPUの売上高で2018年に掛けてアップサイドがあってもおかしくない」としながらも、「2018年の業績見通しは投資家に重大な問題を投げかけるだろう。AMDを見る上で粗利益率が鍵になる尺度だ」と先行きに慎重な見方を示した。同社はインテルの投資判断をアウトパフォームとしつつ、AMDについては中立、目標株価を12ドルと弱気で見ている。
一方、モルガン・スタンレーは23日付のリポートで仮想通貨のイーサリアムの強さを踏まえ、エヌビディアとAMDの4Q、1Qの売上高予想を1億ドルずつ引き上げた。AMDの売上高は4Qで15億4900万ドル、1Qで14億3400万ドルと見込んだが、投資判断はアンダーウエイトだった。
イーサリアムのマイニング需要は噂されているものより大きいとしながらも、パソコン用プロセッサの需要全体を大きく高めるほどではないと指摘。インテルなどの中央演算処理装置(CPU)でセキュリティ上の脆弱性が見つかった問題に関しては「セキュリティ対策のパッチを当てるのは、AMDよりもインテルの方がネガティブなインパクトが大きい」としたが、短期的にAMD株のけん引役が見当たらない点も指摘していた。
QUICK FactSet Workstationによれば、AMDは3Qまで2四半期連続で大幅な増収となり、仮想通貨のマイニングに優れるGPU「Radeon」を含むコンピューティング&グラフィックス部門は大きな成長を遂げてきた。
しかし、サーバ向けプロセッサを含むエンタープライズ組み込み・セミカスタム部門は4Q以降に減収が見込まれており、ビットコインの上昇基調が一服する中、マイニング期待だけで上値を追うのは難しそう。昨年11月に発表したインテル向けのGPU供給も小型パソコン用のため業績への貢献は限られそうで、バリュエーションで割高感が否めない状況下、自動運転やAIなどで大きな話題が欲しいところだ。
AMDのセグメント別売上高の推移(QUICK FactSet Workstationより)
AMD(青)の株価とビットコイン(緑)の推移
米主要企業の四半期決算(主に2017年10~12月期)の発表は今週、ヤマ場を迎える。31日にはマイクロソフトやフェイスブック、1日にはアマゾン・ドット・コム、アップル、グーグルの親会社にあたるアルファベットといった大手ハイテクで構成される「FANGプラス」※の発表が相次ぐ。
今回の注目点の一つは、18年に施行された米税制改革の影響だ。中長期的には収益拡大要因として期待されているが、既に発表を終えたJPモルガン・チェースは一時的だが収益を押し下げた一方、ウェルズ・ファーゴは繰り延べ税金負債を取り崩したことで純利益が押し上げられるなど明暗が分かれた。QUICK FactSet Workstationによると、主要500社の2017年10~12月期の純利益は前年同期比で約12%の増益が見込まれている。
※FANGプラスとは
米国のフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの親会社にあたるアルファベット、アップル、エヌビディア、テスラ、ツイッター、中国ネット通販のアリババ集団、中国検索エンジンのバイドゥをまとめて示す呼称。
(QUICK エクイティコメント)
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。また、米国株については決算結果の速報ニュースのほか、FANGプラスの銘柄を中心に業績の着地点や注目ポイントをまとめた「米決算プレビュー」を決算発表前に配信しています。投資に役立つ独自コンテンツをまとめたQUICK端末の「ナレッジ特設サイト」では、米決算プレビューに加えて決算発表の日程も公表しています。