中国のインターネット通販最大手、アリババ集団が2月1日、2017年10~12月期決算を発表する。中国ネット通販業界がセールを仕掛ける11月11日の「独身の日」効果もあり、QUICK FactSet Workstationによると、売上高は前年同期に比べ49.1%増と予想されている。
【アリババの17年10~12月期決算に対する市場予想】
・売上高 :794億 750万元(49.1%増)
・コマース事業売上高 :693億4700万元(48.9%増)
・一株利益(EPS、Non-GAAP):10.54元(1.67米ドル) 前年同期は9.02元
※予想は1月29日時点、カッコ内%は前年同期実績比
アリババの稼ぎ頭はネット通販などのコマース事業。焦点はアリババが「天猫(Tモール)」など通販サイトの総取引額(GMV)からどれだけのカネを懐に入れることができたかだ。アリババの売り上げは中国本土のネット通販経由がおよそ7割を占めている。出店者が払う手数料などが収入になるため、売り上げの伸びはGMVの拡大に比例する。
中国国家統計局が17年12月中旬に発表した1~11月の小売売上高によると、全国インターネット小売売上高は前年同期比32.4%増と、1~10月(34.0%増)から伸びが1.6ポイント鈍化した。このため一部ではアリババの成長減速の思惑を誘ったが、バークレイズはアリババの独身の日のGMVが39%増と好調だったことなどを踏まえ「アリババは中国のネット通販市場でライバルからシェアを奪い取っている」と解釈する。
1~12月のネット小売売上高は32.2%増と安定し、このうち「物品」に限定した売り上げは28.0%増と1~11月の27.6%から加速していた。マクロ経済指標はアリババの大幅増収を説明する手がかりとなる。
売り上げは伸びるが、利益率を低下させる要因がある。アリババは10~12月期に物流サービスの菜鳥網絡を連結子会社にした。商品配送システムの最適化を担う菜鳥網絡はアリババにとってなくてはならない存在だが、利益を計上していない。中国銀行傘下の中銀国際によると、菜鳥網絡の連結化でコマース事業の売上高に対するEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の比率は10~12月期に前年同期の63.6%から53.5%に低下したようだ。
中国の大型スーパー運営、高キン零售(サンアート・リテール)に4割近く出資したり、生鮮食品スーパーの店舗網を拡大したりするなど、アリババはネットと実店舗を融合する「ニューリテール(新小売り)」戦略を加速している。これもまた、短期的に利益を圧迫する要因だ。ただ、「オンラインやオフラインを問わず、地方や海外へと事業を展開するため、長期的な成長には欠かせない」(中銀国際)。
華興資本傘下の華興証券(米国)の試算では、サンアートなどアリババがこれまで出資した小売業を合わせると市場シェアは12%に上り、アリババの年間売り上げに80億元近くプラスになるという。中国では2017年に小売売上高に占めるインターネット小売売上高の比率が20%に上昇したが、スーパーで売っているような日用消費財のインターネット比率は7%にとどまっている。先行きをみれば、このあたりに「多くのチャンスがある」(華興証券)というわけだ。
アリババ株は決算の利益よりも売上高の伸びに反応する傾向が強い。中国ネット消費の勢いが想定以上なら、利益が多少下振れたところで市場は意に介さないかもしれない。
【アリババの売上高と株価の推移】
(注)グレーの折れ線は株価、水色の棒グラフは売上高予想の最高値、青色は最安値、緑色と赤色の●は売上高の実績値をそれぞれ示す
(QUICK エクイティコメント)
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