GPU(画像処理半導体)大手のエヌビディアが米西部時間16日午後に2018年5~7月期決算の発表を予定している。QUICK FactSet Workstationによると、市場予想の調整後EPS(39社平均)は前年同期比79.8%増の1.65ドルが見込まれている。
部門別売上高ではOEMその他事業が25.6%減と落ち込むものの、売上高全体のうち比率の大きいゲーム部門の成長とともにデータセンター事業の大幅な売上増が見込まれている。直近では米中の貿易摩擦による警戒感から株価水準を切り下げていたが、株価は再び好調な業績を折り込みつつある。
ソフトバンクグループ(9984)は10兆円ファンドの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じてエヌビディアに多額の出資している。エヌビディアの業績や株価はソフトバンクの株価動向にも影響を与えやすい。
【2~4月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高 :30億9760万ドル(+49.3%)
・調整後EPS :1.65ドル(+79.8%)
~~~売上高の部門別内訳~~~
・ゲーム部門 :17億5100万ドル (+47.7%)
・映像化部門 : 2億5500万ドル(+8.7%)
・データセンター部門: 7億4300万ドル(+78.6%)
・自動車部門 : 1億4800万ドル(+4.1%)
・OEMその他 : 1億8700万ドル(-25.6%)
※QUICK FactSet Workstationより
エヌビディアはコンピューターグラフィックスの先端を行くビジュアルコンピューティング企業。PCやモバイル機器に搭載される高性能なグラフィックスチップとプロセッサの開発・製造を手掛ける。
製品用途はPCの画像処理から、ゲーム機、専門可視化装置、データセンター、AI、仮想通貨のデータ処理、自動車などへと拡大の一途をたどる。任天堂(7974)の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のメーンプロセッサーにエヌビディア製のモバイルプロセッサ「Tegra」が採用されている。
売上高の過半はゲーム部門が占め、好調な伸びが予想されている。ゲーム部門の売上高は前年同期比47.7%増の17億5100万ドルが見込まれる。一方、規模こそ小さいものの市場が期待するのはデータセンター部門の伸びだ。18年5~7月の同部門の売上高は前年同期比78.6%増の7億4300万ドルと大幅な伸びが見込まれる。クラウド・サービスを利用する顧客の「ディープラーニング」に対する市場の関心は高いとされ、データセンター部門はエヌビディアが最も注力すべき事業との見方もある。
あるアナリストは「ゲーム事業の成長加速と自動車向けやVR向け製品市場の伸びにより『Tegra』の大幅な売上増」を強気ケースとして挙げる。
<過去20四半期決算分析>
EPS実績 対市場予想
上振れ回数 18
下振れ回数 2
EPS実績/市場予想(%)
平均乖離率 +21.9
平均上振れ率 +27.6
平均下振れ率 -30.2
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 13
下落回数 7
平均騰落率 +5.9
平均上振率 +10.9
平均下振率 -3.3
(注)QUICK FactSet Workstationの「サプライズ履歴」より作成
エヌビディアの決算発表は市場予想の平均を上回るケースが多い。過去5年(20四半期)で18回も市場予想を上振れ、下振れは2回にとどまる。決算発表後1日の同社株の値動きは上昇回数が13回と実績値を評価する向きが強い。
とはいえ、前四半期決算の翌日には実績値が市場予想を上回ったものの、株価は2.2%下落した。5~7月期に仮想通貨向けの半導体需要が落ち込むとの見通しが嫌気された経緯がある。
エヌビディアの年初からの株価推移
その後、株価はじりじりと持ち直し、各社の目標株価の平均(276.19ドル)に接近している。ゲーム事業は安定的な収益源であるとの見方は多いが、ブレが大きいとされる仮想通貨向けGPUが収益にどれほど貢献するか。市場予想を上振れる好業績を示せれば上場来高値の更新が視野に入るだけに、各事業の直近の収益だけでなく目先の見通しにも注目が集まる。(中山桂一)
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。米国株については決算結果の速報ニュースのほか、FANGプラスの銘柄を中心に決算発表前に注目ポイントをまとめた「米決算プレビュー」を配信しています。投資に役立つ独自コンテンツをまとめたQUICK端末の「ナレッジ特設サイト」では、米決算プレビューに加えて決算発表の日程も公表しています。