ウォルト・ディズニーの投資判断を引き上げるアナリストが増えている。QUICK FactSet Workstationによると、「買い/オーバーウエート」が4カ月ぶりに半数を超えた。足元の堅調な業績に加えて、21世紀フォックスのコンテンツ事業の獲得に伴うポテンシャルの高まりが背景にある。株価は年初来高値に近い水準。8日の引け後(日本時間9日午前)の2018年7~9月期決算発表の中身しだいで、大きく反応する可能性もある。
テーマパーク事業が寄与し、市場平均上回る利益成長に
QUICK FactSet Workstationによると、市場はディズニーの7~9月期の1株あたり利益(EPS)を前年同期比25%増の1.33ドル(10月末、22社)と予想。主要500社の17%増益を上回る利益成長を達成するとの見方だ。テコ入れ中の有料テレビ事業が収益の足かせとなったものの、テーマパーク事業でカバーしたようだ。映画関連事業の伸長やトランプ政権による法人減税も寄与した。
<市場予想>
18年7~9月期
・売上高 137億ドル(7.4%増)
・EPS 1.33ドル(24.7%増、非GAAP)
(注)10月末時点、EPSは22社の予想()内は前年同期比
Huluを軸としたポテンシャルに注目
成長のカギは今後、動画配信となるだろう。なかでもフォックスのコンテンツ事業の買収で経営権を握る動画配信サービス「Hulu(フール―)」との連携は、未知数なだけに市場の注目も高い。投資判断がにわかに引き上げられた背景には、こうした先行き期待に加えて、英有料放送局スカイ株を巡る動きもあったようだ。
ディズニーがフォックスから買収する一部事業の中には、スカイ株39%も含まれていた。しかし、フォックスがスカイ株の残り61%の取得を巡るコムキャストの争奪戦に敗れると、フォックスは9月下旬、ディズニーに売却するスカイ株39%をコムキャストに売却すると発表。ディズニーは欧州ビジネスのルートを1つ失ったものの、スカイ株の売却益を事業に有効活用できると評価された。
市場の目標株価は平均121.99ドル(24社・5日時点)だが、モルガン・スタンレーは15日付リポートで130ドルから135ドルに引き上げた。RBCキャピタル・マーケッツは140ドルと強気だ。
一方で、収益性や競争激化に伴うコンテンツ制作費の増加などに注目したい。例えば、動画配信で先行するネットフリックスの収益の伸びは著しいが、売上高営業利益率はディズニーの半分程度。ネトフリの18年のコンテンツ制作費は80億ドルともいわれ、純現金収支(フリーキャッシュフロー)の赤字が続いている。動画配信事業はとかくお金がかかるだけに、売り上げが拡大してもこれまでの利益率を維持できるか、見極める必要がある。(根岸てるみ)
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