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ザイリンクス株、遠のく5Gの恩恵 米中摩擦で収益に陰り

NQNニューヨーク=古江敦子

半導体大手のザイリンクスが23日に発表した2019年7~9月期決算は、米中貿易摩擦による悪影響が鮮明だった。次世代高速通信規格「5G」関連を含む主力の通信機器部門は減速した。先行きの売上高見通しは、華為技術(ファーウェイ)など中国IT(情報技術)企業への米政府のよる禁輸措置が当面続く可能性を織り込んだために市場予想に届かなかった。株価は時間外で一時88.24ドルと終値を6%下回った。

「通信機器向けの弱さは想定以上だった」。ビクター・ペン最高経営責任者(CEO)は決算発表後の説明会で開口一番こう述べた。7~9月期の通信機器部門の増収率は前年同期比で24%と、4~6月期の66%から大幅に悪化。ペン氏は「5月中旬以降、米政府にはファーウェイへの禁輸措置の適用除外を申請してきたが、一切許可が出なかった。これが響いた」と早口でまくし立て、いらだちを隠さなかった。

説明会では、大口顧客であるファーウェイ以外の中国企業への供給も細っていることをうかがわせた。通信機器部門の落ち込みは20年1~3月期まで続き、20年3月期の同部門の売上高は前年比で横ばいを見込むという。売上高に占める中国の割合は既に2割を超えており、打撃は大きい。23日に示した20年3月期の売上高見通しは32億1000万~32億8000万ドルと、市場予想(33億9700万ドル)以下だった。

サントラスト・ロビンソン・ハンフリーのウィリアム・スタイン氏はザイリンクス決算について、「今後1年で中国の5G基地局は急速に増える見込みで、ザイリンクスは(米政府の措置などによって)市場シェア拡大の機会を逸する」と懸念する。しかも、基地局向けの半導体は競争激化が想定されている。レイモンド・ジェームスのクリス・カソ氏は「5G開発の初期段階で需要を幅広く集めてきたザイリンクスだが、これからは厳しい。(業績は)伸び悩むかもしれない」と警戒していた。

ザイリンクスの半導体の強みは集積回路「FPGA」。出荷後に状況に応じて設計を柔軟に変えられることから、開発途上にある5Gの基地局に適すると考えられてきた。複数帯域幅への接続や信号処理などの最適化に向け回路を自由に書き換えられるためだ。ただ足元では、書き換えのできない集積回路「ASIC」用に5G向けの部品を取り付けられるようになった。FPGAの魅力が薄れかねない状況となっている。

通信機器向けがさえない一方、今後は人工知能(AI)やクラウドコンピューティングなどで成長が見込めるデータセンター事業が収益を支える――。ザイリンクスが描く予想図だ。ペンCEOは「10~12月期には低調な収益が底入れし、来年から改善基調となる」と述べた。それでも投資家の失望は癒やされなかった。

ザイリンクス株のPER(株価収益率)は23日時点で24倍だ。キーバンク・キャピタル・マーケッツは「半導体銘柄の中ではやや割高感があり、株価は(さらに)調整してもおかしくない」と指摘している。

  • 日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。


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