NQNニューヨーク=横内理恵
代替肉のビヨンド・ミート株に下値不安が広がっている。28日の通常取引後に発表した2019年7~9月期決算は売上高が前年同期比3.5倍となり、四半期ベースで上場後初めて黒字となった。ただ、上場から一定期間、大株主の株売却を制限する「ロックアップ」が29日に解除されるため、株式需給が緩むことに備えた売りが出た。株価は時間外取引で10%あまり下げる場面があった。
業績面では快進撃が続く。7~9月期の売上高は9196万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(8220万ドル前後)を大幅に上回った。消費者の環境保護姿勢や健康志向などから「プラントベースミート(植物肉)」への関心が高まっている。7月にはダンキン・ブランズが「ビヨンド・ソーセージ」を使ったサンドイッチ提供を一部店舗で始めるなど、ファストフードチェーンやレストラン向けの販売が4.1倍と急増した。
プラントベースミート(植物肉)を使ったハンバーガーのパテなどが人気 (写真=Smith Collection/Gado/Getty Images)
19年12月期通期の売上高見通しは中央値で前期比3.1倍の2億7000万ドルと前回の「2億4000万ドル以上」から引き上げ、市場予想も上回った。期中で2度目の上方修正となる。9月下旬にマクドナルドがカナダの一部店舗でハンバーガーの試験販売を始め、10月下旬にはダンキンがサンドイッチの販売を全米に拡大すると発表した。外食企業を中心に供給先の拡大が続く見通しだ。最高経営責任者(CEO)のイーサン・ブラウン氏は決算説明会で「2020年も良い年になる」と楽観を示した。
ただ、成長期待とは裏腹に株価には暗雲が漂っている。ロックアップ期間終了に伴い、発行済み株式数の8割に相当する株が売買の対象になるためだ。株価は7月下旬に239ドルと公開価格(25ドル)の9倍強に上昇したが、短期間に急騰したことで夏以降は空売りの標的になり、足元では最高値を6割下回る水準にある。ロックアップ解除で流通株が一気に増えれば空売り勢が勢いづく可能性もある。
決算発表後の28日の時間外取引では株価は一時10%強下落した。材料出尽くし感に加え、29日以降の需給悪化に備えて売りを出した投資家も多いとみられる。目先は腰の据わった買いが入りにくく、下値を探る場面もありそうだ。
本業についても楽観一色ではない。参入障壁が比較的低いとの見方もあり、同業大手のインポッシブル・フーズ(非上場)や食肉大手などとの競争激化への懸念は強まっている。決算説明会でも競争力や市場シェアを維持するための戦略に関する質問が目立った。
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