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社債管理の「補助者」導入、活性化するか低格付け債 改正会社法の隠れた焦点

日経QUICKニュース(NQN)=片岡奈美

政府が今国会の重要法案と位置づけてきた改正会社法が今週の参院本会議で可決、成立した。上場企業の社外取締役の設置義務や株主提案権の乱用を防ぐ措置が盛り込まれたのに加え、市場の目線では、社債管理に関わる改正が含まれている点も見逃せない。

注目点のひとつは「社債管理補助者制度」だ。社債管理に関する最低限の事務を第三者に委託できないかとの声に応え新設される制度で、管理がより円滑に進められるようになると期待されている。

いまは「管理者なし」起債が主流

現行法では無担保の社債を発行する場合、原則として社債管理者を定め、社債権者のための管理を委託しなければならないことになっている。だが実際には「例外」規定を利用し、社債管理者を置かずに財務代理人だけを置く「FA債」が機関投資家向けの社債では主流だ。社債発行に際して「券面が1億円以上」または「債権者が50口未満」なら、いわゆるプロの投資家が債権者となることを念頭に、保全活動などをしてくれる社債管理者をおかなくてもよいことになっているためだ。

FA債では債務不履行が生じた際、社債権者に損失や混乱が生じやすい。債権者自らがすべてまとまり、一丸となって債権保全のために動くというのは難しいからだ。「潰れると思って買う投資家はいない」(国内機関投資家)とはいえ、リスクが少ないに越したことはない。

社債管理補助者は、現行の社債管理者よりも権限が限られる半面、責任も限定的だ。設置コストは安く済む公算が大きく、担い手の裾野も広がるだろう。

社債管理補助者の設置はあくまで「任意」で、実際に普及するかは発行体次第だが、歓迎ムードは強い。国内市場では信用度の高い社債の発行ばかりに偏っているが、「低金利の環境下で発行機運の高まる低格付け債(ジャンク債)発行の後押しにつながれば市場全体の厚みが増し、投資家側の選択肢が広がるのではないか」(大手金融機関の運用担当者)との声もあがっている。

社債権者集会の決議省略が可能

今回の法改正ではもう一つ、社債権者集会の決議の省略も関心を集めそうだ。書面や電磁的記録で債権者全員が同意すれば社債権者集会を開催しなくても、集会決議と同様の決議があったとみなせるというもので、消滅まで2年あまりと目されるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の後をどうするかなど、実務の面で光が当たるかもしれない。

SMBC日興証券の阿竹敬之クレジットリサーチ課長は「多くの社債が参照するLIBORが公表停止になった場合、これまでの制度にのっとって各社債1本ずつ社債権者集会を開催するのは、関係者の負担が重い」と指摘。そのうえで「全員の同意が必要なので社債権者集会の決議を省略するハードルはまだ高いものの、これまでよりは前進した」とみていた。

超低金利下で国内の社債発行額は4~9月期に過去最多を更新した。活況が明らかな今だからこそ、投資家の権利を守る仕組みや機動的に対応できる制度の重要性が意識されている。

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。


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