QUICKコメントチーム=本吉亮
飛ぶ鳥を落とす勢いだった貴族の没落ーー。長らく低迷を続けていた鳥貴族(3193)に、ようやく復調の兆しが見え始めた。6日発表の1Q決算が大幅増益となったほか、月次の既存店売上高が約2年ぶりにプラスに浮上した。株価は2017年に付けた上場来高値から約半値の水準にあり、底入れ反転が期待される。
鳥貴族は大阪郊外を中心に展開するローカルな焼き鳥チェーン店だったが、2014年7月にジャスダックに新規上場したことを皮切りに首都圏への本格展開を開始。お通しがない、低価格でコスパに優れるなど消費者の支持を得ると、メディアでの露出も増えて一大ブームを巻き起こした。
これを商機と捉えて年間70~80店のハイペースで店舗網を拡大したことから歯車が狂い始める。大量出店で自社の既存店が客を奪い合うような状況となったうえ、鳥貴族人気にあやかろうと「やきとりセンター」「豊後高田どり酒場」「鳥二郎」や、“隠れワタミ”などとも称された「三代目鳥メロ」など、類似の店が次々と出現したことで飽和感が蔓延し始めた。それに追い打ちをかけたのが値上げの実施だった。
鳥貴族は商材である「ニワトリ」にちなんで長らく全品税抜き280円を維持していたが、17年10月に人件費や物流費の上昇を理由に全品298円へ約6%の値上げした。値上げ実施直後は来店客の減少を客単価の上昇で補っていたが、18年に入ると一気に客離れが加速。既存店売上の減少が2年近くにも及んだことで業績も悪化の一途をたどり、19年7月期は最終赤字転落を余儀なくされた。
この後、出店を凍結して不採算店舗の閉鎖やサービス改善などに取り組んだことなどが奏功し、19年8~10月期(1Q)決算は売上高が前年同期比4.6%減の85億円、営業利益は3.7倍の5億円と大幅増益で着地した。特筆すべきは、販管費が約1割減少したことだろう。採算管理の徹底により、減収ながら大幅増益を達成できた体質転換はポジティブに評価できる。さらに、11月の既存店売上高が17年12月以来のプラスとなり、今後も既存店がプラス継続となれば、2Q以降は増収増益となる公算が大きくなる。
タピオカブームが終焉に向かいつつあるなか、メディアで取り上げられることも重要だ。横浜DeNAベイスターズの今永昇太投手が、5日に行った契約更改の席上で大幅増となった年俸の使い道について、報道陣を鳥貴族へ招待するプランを明かにしたことが話題となった。消費増税で外食産業に逆風が吹いているが、苦境から這い上がった鳥貴族が再び脚光を浴びる存在になるのか注目したい。
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