QUICKコメントチーム=片平正二、写真=Justin Sullivan/Getty Images
年明けから波乱含みの2020年は、次世代通信規格「5G」の真の元年でもある。中でもアップルは例年9月に新機種を発表・販売する予定で、今年は5G対応のiPhone5G(仮称)に対する期待値が高い。
QUICK FactSet Workstationによれば、2020年通期(2019年10月~2020年9月)のiPhone販売台数の市場予想は1億9405万台。過去最高を記録した2015年通期(2億3122万台)には届かないが、2年ぶりに2億台に乗せる可能性もあるという。JPモルガンは6日付のリポートで投資判断のオーバーウエイト(買い)と目標株価296ドルを維持した。予想株価収益率(PER)で18~19倍の水準で取引されている現状を踏まえ、再評価が適切な時期としつつ長期投資家にとってアップサイドの可能性があると指摘。iPhone5Gが業績のけん引役になるとし、コンセンサスの販売台数より5%増える可能性があると強気の見方を示していた。
(QUICK FactSet Workstationより)
iPhoneを巡っては、2018年に10周年記念のiPhone Xが発売された時にも買い換えによる「iPhoneスーパーサイクル」の期待が出ていた。2015年に大型化されたiPhone6 Plusが発売されてから3年が経過して買い換えが見込まれたが、iPhone Xは初の有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレー(OLED)搭載モデルとはいえ、999ドルからという強気の価格設定もあってアップルユーザーの買い換えを促すほどではなかった。発売が11月に遅れるという不運も重なりスーパーサイクルは空振りに終わったわけだが、今回は5G対応という技術・性能の裏付けがあるだけに高価格機種への買い換えが進みそうだ。
やや警戒されるのは、iPhone5Gの一部機種の販売がずれ込むのではないかとの見方が出ていること。米経済専門チャンネルのCNBCは6日、サスケハナ・ファイナンシャル・グループの見解として「今年9月に発売される最初のiPhone5Gはまずサブ6GHzモデルで、独自のアンテナ・イン・パッケージ(AiP)を採用したミリ波(mmWave)対応のものは12月~2021年1月になる見通しだ」と報じていた。
新機種の発売の遅れはiPhone Xで経験済みだけに、事前観測で株価が弱含む場面があればそこは押し目買いチャンスかも知れない。2019年に年間で86.16%高となってダウ工業株30種平均を年間で921ドル押し上げたアップル株が今年も一段高となれば、米主要株価指数にはこの上ない援軍になる。
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