NQNシンガポール=依田翼
インドの株式相場が1日の土曜日に大幅に下落した。1日は、次年度(4月~翌年3月)の予算案の発表日。売られたのは減税などの税制改革が投資家の期待に応える内容ではなかったと受け止められたためだ。予算案の発表に合わせてわざわざ土曜日に臨時に取引を実施したにも関わらず急落するという皮肉な結果に終わった。
1日は通常の時間帯で取引が実施された。主要株価指数のSENSEXやニフティ50は午前中、横ばい圏で推移していたが、モディ首相が予算案の発表を始めると急速に下げ幅を拡大。SENSEXは一時1000ポイント超下落した。最終的には987.96ポイント(2.4%)安の3万9735.53と、約3カ月ぶりに4万を割り込んだ。通貨ルピーの下落を見越し海外収益が多いIT(情報技術)サービス大手が上昇したのを除けば、業種を問わず幅広い銘柄が売られた。
相場が下げたのは予算案への失望だ。特に株式売却益にかかる課税が維持されたことが大きい。インド政府は2019年9月に大規模な法人税の大幅減税を発表。今回の予算案には控除の縮小とセットではあるものの、所得税の減税も盛り込まれた。株式に関しては配当課税は減税となったが、現地報道によると株式関連の幅広い減税の可能性が指摘されていたにも関わらず、キャピタルゲイン(値上がり益)への課税に大きな変更はなかった。予算案自体は専門家からは「成長とマクロ経済の安定に注力した現実的な内容」(投信運用のインベストメント・トラスト・オブ・インディア)などおおむね肯定的な評価だったものの、市場関係者からは失望を招いた。
今回、土曜日の取引が発表されたのは直前だった。ムンバイ証券取引所が臨時の取引実施を発表したのは1月21日。インドでは一部祝日に数時間の夜間取引を実施することは通例だが、今回のような取り組みは例外的だ。予算案が発表となる2月1日が土曜日だったため取引実施を決めたとみられる。場中に重要イベントがあると売買が膨らみやすいため、取引所としては「かき入れ時」と判断したのだろう。実際は、土曜日にも関わらず1日の売買株式数や売買高は平日並みだった。
インドの実質経済成長率は4%台と比較的低調だ。そんな中で株式相場は中央銀行による利下げ期待や各種の減税をはじめとする政府の経済てこ入れ策への期待感から上昇を続けてきた。いったん予算案を織り込んだことで更なる一段の急落は避けられそうだが、市場では「実体経済の回復が乏しい以上、相場は一進一退の展開となる」(資産運用会社のモティラル・オズワル)など、期待先行の上昇相場は一巡したとの見方がある。
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