日経QUICKニュース(NQN)=大貫瞬治
新型コロナウイルス感染症の影響で訪日外国人数の減少が止まらない。日本政府観光局(JNTO)が20日発表した4月の訪日外国人客数(推計値)は、前年同月比99.9%減の2900人と過去最低を記録した。3月(93%減)に続き大幅な減少が続いている。訪日客の減少は航空業界の業績を直撃しており、収束後の回復の兆しもまだ見えない。
■大幅に減った訪日客
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、政府は緊急事態宣言を発出して外出自粛を要請しているほか、現在、世界100カ国・地域について入国拒否を実施している。
4月の訪日客数の内訳を見ると、米国では前年同期比99.8%減の300人、中国は100%減の200人だった。感染第2波の恐れがみられる欧州では英国は99.9%減の30人、ドイツやイタリア、スペインではいずれも100%減の10人未満と、記録的な落ち込みとなっている。小数点第2位を四捨五入するために減少率が100%となっている。
■航空業界への影響
影響を受けているのが航空業界だ。4月の国際線旅客数は日本航空(9201)が前年同月比2.0%(1万6039人)、ANAホールディングス(9202)が同4.2%(3万4976人)までそれぞれ落ち込んだ。JALは14日、コスト削減のため6月の国際線について96%を減便すると発表。ANAHDは事業策定が困難だとして21年度採用の一時中断を表明しており、開始時期は未定だ。両社の2020年3月期の連結決算をみるとJALは純利益が前の期比64.6%減、ANAホールディングスは同75.0%減となった。
海外では経営が立ち行かなくなるケースも出始めている。タイでは19日に政府系大手のタイ国際航空が経営破綻、オーストラリア航空第2位であるヴァージン・オーストラリアも4月に事実上の経営破綻を発表した。SMBC日興証券の吉川毅クレジットアナリストは「融資枠の設定などすでに借り入れのめどをつけている国内航空会社が海外のように経営破綻をするのは現時点で考えにくい」としながらも「債務増加による財務バランスの悪化が進むことには警戒しなくてはならない」と話す。
■国際線の旅客需要が戻るのは24年?
茂木敏充外相は15日の記者会見で、入国制限の緩和を巡りビジネス関係者を優先するとの見解を示し「観光客も含めて一般ということになると、それよりはかなり遅い段階になる」と述べた。第一生命経済研究所の小池理人副主任エコノミストは「ビジネス関係の渡航は旅行などに比べて規模が小さい」として、急激な回復は見込めないと指摘する。国際航空運送協会(IATA)は国際線の旅客需要が19年の水準に戻る時期を24年と見込むも、国内証券会社のアナリストは「予測が修正される可能性もあり、不確実性は相当に高い」と語る。
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