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「ペッパー売却」と増益の東エレク、明暗で浮かぶ「新常態の二極化」

日経平均株価が足元で底堅く推移している。実体経済や新型コロナウイルスの感染「第2波」への懸念から下げ幅が大きくなる場面があるものの、悲観的なムードは弱い。一方で個別銘柄ごとに値動きを見ると「新常態」を織り込む動きが鮮明になっているのが実態だ。

■東エレクが増収増益・増配予想を開示

東京エレクトロン(8035)は18日大引け後に開いたウェブ説明会で、河合利樹社長が「2020年年初時点ではWFE(半導体前工程装置)市場は10%台後半との米国大手半導体メーカーの市場予想に違和感はないと考えていたが、今回は10%程度の成長とみている」との趣旨の説明があったとしている。前回予想からは成長率を引き下げた格好だが、東エレクが増収増益および増配の予想を開示したことは、他の半導体関連銘柄のサポート要因ともなりうるだろう。

■ペッパーフードは「新常態の二極化」を示唆か

一方で、ペッパーフードサービス(3053)の一部事業の売却観測は「新常態の二極化」を示唆しそうだ。18日夕方配信の共同通信ニュースは「ペッパーが主力の『ペッパーランチ』事業を売却する方針を固めたことが同日分かった」と報じた。売却額は100億円近くを見込み、取得する資金でもう一方の主力事業の「いきなり!ステーキ」の立て直しを目指すと伝えた。

外食産業は新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされ、業績への直撃を受けたセクターのひとつ。地方自治体などの営業自粛要請の緩和とともに来店者数の回復を図るが、感染防止のために店内の座席配置での間隔の確保や入店制限などの対応が求められる。消費行動が活発になり来店者数が復調となっても、売上高の回復は頭打ちが見込まれる構造的な問題を抱える。東エレクが示した半導体・FPD市場のポジティブな見通しと対照的に、ペッパーの一部事業売却の観測は、移動制限やソーシャル・ディスタンスが事業環境に影を落とす「新常態の二極化」を示唆する。

共同通信は食肉卸大手のエスフーズ(2292)やコメ卸最大手の神明ホールディングスによる連合などが買収に名乗りをあげるとみられると伝えた。ペッパーは18日午後8時10分にプレスリリースを発表し、報道は同社の発表によるものではないとコメント。事業の売却を含め、財務体質の健全化に向けた各種の検討を行っているが、報道に関して決定した事実はないとした。ペッパーは否定したものの、経営再建に向けて踏み込んだ報道が出ることは厳しい事業環境を物語る傍証と受け止められる。

ただ、19日の取引でペッパー株は制限値幅の上限(ストップ高)まで上昇しそのまま引けた。事業売却の観測が報じられ、経営再建の進展が期待材料となったようだ。

■外食で進む縮小均衡の模索

外食大手では、ロイヤルホールディングス(8179)が5月14日に、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などで不採算店舗を2021年までに70店程度閉店する方針であると発表したことが外食産業の「ウィズ・コロナ」をうかがわせる先行事例だった。同社では新型コロナウイルス感染症の影響期間をおおむね6カ月(2020年2月~7月)と想定しているが、2020年12月期上半期(1~6月期)連結決算の最終損益は5000万円の黒字予想から155億円の赤字を見込むと下方修正し、20年12月期連結の通期見通しは前回予想を取り下げて「未定」とするなど厳しくみている。

チェーン規模を縮小させる動きは中堅にも相次いだ。関西が地盤の外食企業であるフレンドリー(8209、東証2部)は6月4日に、総店舗数70店舗のうち41店舗を閉店するなど、業態を「釜揚げ讃岐うどん 香の川製麺」に絞り込むと発表した。2019年10月の消費税率再引き上げで、客単価の高い居酒屋業態を中心に売上高減少があったが、新型コロナウイルス感染症の拡大で地方自治体による自粛要請が響いた。
 九州地域を中心にファミリーレストランを展開するジョイフル(9942、福証)は8日、ジョイフル業態を中心に200店舗程度を撤退すると発表している。退店時期は2020年7月以降としている。同社ウェブサイトによると5月17日時点の店舗数は767店で、撤退規模は約4分の1に相当する。撤退の費用の影響額を含め、20年6月期業績については策定中とした。

外食に限らず、空運や陸運、百貨店やドラッグストア、化粧品、宿泊施設や旅行感関連などのインバウンド関連など、期待される回復の度合いはさまざま。東エレクのガイダンスはセクターごとに異なる「ウィズ・コロナ」の事業環境を浮かび上がらせそうだ。(QUICK Market Eyes  山口正仁)

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