新型コロナウイルス感染拡大の影響で大荒れとなった2020年前半の株式相場。投資信託を運用する投資のプロたちも前例のない状況への対応にてんてこ舞いだった。有力ファンドは半年間で組み入れ銘柄をどう入れ替えたのか。月次レポートをもとに「ビフォーアフター」を検証した。
今回取り上げるのは東京海上アセットマネジメントの「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」(49311134)。経営者(オーナー)が実質的な主要株主である国内企業の株式に投資するファンドで、経営者のリーダーシップなどを重視しつつ割安と判断した銘柄を組み入れる。
■日本電産が首位、ソフトバンクは圏外に
20年6月末時点の組み入れ上位10銘柄を19年12月末時点と比べると、7銘柄が新しくランキング入りした(図1)。20年6月末時点の組み入れ1位は精密モーター大手の日本電産(6594)。同社は4月に社長に就任した関潤氏と永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)との二頭体制を本格始動させた。半年前に1位だったソフトバンクグループ(9984)は圏外となった。
2位は戸建て住宅を手掛けるオープンハウス(3288)、3位は駐車場・カーシェア事業を展開するパーク24(4666)と、新しく上位に入った不動産業が続いた。5位には6月に投資を始めた製造業務向け派遣大手のUTグループ(2146)がランク入り。銘柄数は43から45に増えた。
■小型株を売却、中大型株を組み入れ
市場別・規模別の資産構成を比べてみると、東証一部に上場する中型株への投資割合が増加した(図2)。業種別は引き続き「サービス業」の割合が最も多いが、業種間の偏りは半年前より小さくなった。
臨時レポート(6月12日時点)によると、4月以降に小型株を売却して中大型株を組み入れた。「ウィズ・コロナ」と「アフターコロナ」を両にらみで銘柄を構成し、新規投資銘柄には、組み入れ3位のパーク24(4666)や、フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(4385)、IT(情報技術)大手のGMOインターネット(9449)、サイバー対策のデジタルアーツ(2326)を挙げた。
最新の月次レポート(6月30日時点)によると、6月にはソフトウエア企業や物流自動化関連企業を全売却し、割高になったと判断した銘柄から割安な銘柄に入れ替え、投資割合を調整した。
■オーナー企業に成長余地
今後の運用については、「アフターコロナ」を見据えた銘柄へ入れ替えを進める方針。ただし、新型コロナ感染拡大の第2波のリスクも意識しながら、「対コロナ」「ウィズ・コロナ」のフェーズに戻った場合に対応できるよう機動力を確保する。オーナー企業の成長余地については「厳しい事業環境の中でも迅速に対処し、一貫して長期的な株主利益を追求する優れたオーナーの率いる企業は投資家から選好されやすい」とみている。
6月末時点の年初来リターン(分配金再投資ベース)は1.5%のプラスで、基準価額は7月に入り設定来最高を更新した。3月中旬の大底から6月末までに45.8%上昇し、同期間に27.8%上昇した東証株価指数(TOPIX、配当込み)を大きく上回る回復力を見せている(図3)。(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)