7月末を基準日とする優待権利確定日が7月29日に接近している。社数は31社と少ないが、映画館や外食系、体験型の優待などラインアップが充実している。
■利用機会損失への対応
新顔では中華料理チェーンを展開する浜木綿(7682、ジャスダック)が加わった。優待では100株以上を保有する株主を対象に飲食代金に使える優待券を配布する。新型コロナウイルスの感染拡大で思うように使えない場面もありそうだが、個人投資家の株式市場への新規参入が増える中で、優待への関心は引き続き高い。
例えば、3月優待銘柄で人気の航空券の割引購入ができる日本航空(JAL、9201)は2020年3月末時点の個人株主数が23万1197人と、前の期末比で64%増。同じく航空券割引の優待を実施するANAホールディングス(9202)は同7%増の48万4416人に増えている。また両社とも優待の有効期限の延長を発表しており、利用機会損失への対応も進めている。
■優待利回りランキング
7月優待銘柄をみると、19年7月末と比較して値下がりしている銘柄が30銘柄中15銘柄と、半数を占めている。株価低迷で妙味が増している銘柄も増えていると言えそうだ(図1)
なお、7月優待銘柄のうち、優待利回りでランキングすると首位は少人数型結婚式場のブラス(2424)。披露宴の10万円分の割引券や株主向け食事会への特別料金での招待、また200株以上を保有する株主にはクオカード1000円分を配布している。単価の高い披露宴料金の割引のため、利回り換算した金額が高めになっている。2位にはREIT(不動産投資信託)のヘルスケア&メディカル投資法人(3455)が入る(図2)。
同社は老人ホームや介護施設、医療関連施設を中心に投資するREITだ。優待内容は介護施設への体験入居や一時金や月額利用料の割引を実施しているため、利回りが高めになる。優待の観点で見ると本人や身の回りの人のなかに入居を考えているような対象がいない場合にはあまり検討対象にならないかもしれない。ただ、分配金利回り(年間ベース)でみても5.06%と、利回り面でも相対的に魅力的に映る。
■利回りだけに着目は不安
REITは保有資産により運用状況が左右されやすい状況となっている。分配金の水準が相対的に維持しやすい保有資産であるかも重要だ(図3)。
例えば7月末優待銘柄でもあるいちごホテルリート投資法人(3463)は4月に20年7月期の予想分配金を2216円から873円に引き下げている。新型コロナによる宿泊需要の大幅減少で、基準売り上げに連動する変動賃料が減ったためだ。足元は「GoToトラベル」キャンペーンの効果も限られそうな状況下、変動賃料の回復には時間がかかる可能性もある。利回りだけに着目して投資をするのは不安も残るのは否めない。
■映画館関連
7月では目立つ映画館関連の優待では東京楽天地(8842)、きんえい(9636、2部)、オーエス(9637、同)の3社がある。ただ楽天地やオーエスは2月に東宝(9602)と優待提携の解消を発表しているため、例えば楽天地の優待では利用できる映画館が直営劇場の「TOHOシネマズ錦糸町 オリナス」と「TOHOシネマズ錦糸町 楽天地」のみに限られている。
新型コロナの影響もあり、優待の見直しの動きは7月に入っても続いている(図4)。
7月に廃止を発表した主な企業は3社。それ以外にも配当を優先させるため優待を減額や、婚礼衣装のクラウディアホールディングス(3607)のように自社サービスとの関連の高い優待に絞り、おこめ券の廃止に踏み切る企業もある。一方、でフグ料理店の関門海(3372、2部)は優待金額を増額した上でお取り寄せ商品でも使えるように新型コロナに対応するような変更もみられる。優待でも進む「新常態(ニューノーマル)」への対応にも注目したい。(QUICK Market Eyes 弓ちあき)