8月12日に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%上昇とQUICK FactSet Workstationによる市場予想(0.3%上昇)を上回り、2カ月連続での大幅な伸びとなった。エネルギー価格が前月比2.5%上昇したことが指数全体を押し上げた。一方、食料品が前月比で0.4%低下、自宅用の食料品は1.1%低下した。
前年同月比でもCPIは1.0%上昇と市場予想(0.7%上昇)を上回った。エネルギー価格は前年同月比11.2%低下、食料品は4.1%上昇、自宅用の食料品は4.1%上昇となっている。
変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数も前月比0.6%上昇と市場予想(0.2%)を上回り、伸びが加速した。1991年1月以来29年6カ月ぶりの大幅な伸びとなった。前年同月比でも1.6%上昇と市場予想(1.1%上昇)を上回った。

■米BEIが半年ぶりの高水準
米債市場で市場の期待インフレを現すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が12日、前日比0.58bps上昇して165.39bpsとなった。新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に感染する前の2月19日(165.53bps)以来、半年ぶりの水準を回復した事になる。
バイオ医薬ベンチャーのモデルナが11日、開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンに関して1億回分の供給で米政府と合意したと発表したことで株式市場では地合いが改善。主力ハイテク株が強含む一方、米債市場では10年債入札が好調だったものの、株高を受けてスティープニングが進んだ。著名金融ブログのゼロ・ヘッジは12日、「インフレ期待に関する限り、新型コロナのパンデミックは明らかに終わっている」とし、ワクチン期待でリスクオンの展開が強まる中、BEIが発するシグナルに注目していた。
(QUICK Market Eyes 丹下智博、片平正二)
<金融用語>
ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)とは
市場が推測する期待インフレ率を示す指標のこと。英語表記(Break Even Inflation rate)を略して「BEI」とも呼ばれる。物価連動国債の売買参加者が予測する今後最大10年間(物価連動国債の残存期間次第で10年未満になる場合がある)における年平均物価上昇率を示す。ここでの物価変動はコアCPIと呼ばれる「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)」を基準とする。 物価連動国債の利回りを実質金利と呼び、実質金利と長期金利(長期固定利付国債利回り)の間には理論的に「期待インフレ率≒長期金利-実質金利」という関係が成立する。実質金利は物価連動国債の市場価格から計算できるので、同年限の長期金利と対比することにより、期待インフレ率を逆算推計することが可能となっている。 ただし、実質金利に対応する物価連動国債の市場価格は、期待インフレ率以外の要因として需給関係や流動性などのリスクプレミアムの影響を少なからず受けるとの考え方が通説となっている。