先週末で4~6月期の決算発表がほぼ一巡となった。QUICKナレッジ特設サイトの決算モニタで金融除く3月決算の全上場企業の2021年3月期会社予想を集計した。これによると売上高は前期比8.7%減で約6割が減益の見通しで、増益の見通しの企業は約4割にとどまる。営業利益では、同24.9%減を見込み、約7割の企業が減益を予想している。
■循環物色が戻りの支え
今回の決算シーズンでは、非開示だった業績見通しの開示も進んだが、増益よりは減益の見通しの割合が多かった。日経平均の予想1株利益(EPS)は、前週末時点で1011円と約1カ月前の7月17日の1215円に比べて、約17%低下した。ただ、期初比では企業の見通しは底入れ感も出つつある。前述の決算モニタの3月決算企業の集計では、期初にくらべて今期の見通しを下方修正した企業は22社あったが、期初見通しを上方修正した企業数は、62社となった。
一方、海外で新型コロナウイルスのワクチン普及期待や米国の追加の経済対策の期待などが好感された流れを受けて、日経平均株価は前週におよそ2カ月ぶりに2万3000円を回復した。バリュー株への資金シフトも進み、トヨタ自動車(7203)が8月13日まで8日続伸した。好業績のグロース株への物色も継続し、14日は、エムスリー(2413)やイビデン(4062)、ソニー(6758)といったグロース株やハイテク株が新高値を更新し、循環物色が相場の戻りを支えている。
■工作機械メーカーに好影響
バリュー株の物色には、中国の景況感の改善も寄与している。中国国家統計局が7月16日発表した2020年4~6月の国内総生産(GDP)は物価の変動を除いた実質で前年同期比3.2%増えた。1~3月期のマイナス6.8%から一転2四半期ぶりにプラス成長に転換した。 中国の生産・企業活動に回復が見られ、自動車販売などにも復調の兆しが出ている流れを反映している。中国の経済回復は日本の工作機械メーカーにも好影響を与えている。12日に発表された7月の工作機械受注の速報値は、前年同月比で31%減の697億円となり、5月の同53%減、6月の同32%減からは、こちらも改善の兆しが見て取れる。
■中国に底打ち感
一方、14日発表の7月の中国小売売上高は前年同月比で1.1%減と市場予想の0.1%増を下回ったことから消費の戻りの鈍さを指摘する声も多い。野村証券では、14日付のリポートで新型コロナウイルスの影響で飲食業や宿泊業などがマイナスに寄与したが、これらの事業者の約半数で改善が続いていると指摘した。
さらに通信機器(スマホ等)の7月小売売上高は、前年同月比11.3%増と堅調だったとしている。理由として中国では5G(次世代通信規格)対応モデルへのシフトが順調に進んでいることなどを上げている。消費や雇用に未だ鈍さが見られるものの、中国の企業活動には底打ち感が出てきていることがバリュー株など景気敏感株の下支えとなりそうだ。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)