安倍晋三首相の健康問題が警戒される中、シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは25日付の「アベグジット(安倍首相の退陣)・リスクをどう捉えるべきか?」と題するリポートで「支持率低下の中、2007年退陣時のような健康不安が再燃している。欧米メディアの報道が少ないこともあってか、海外勢の関心は低く、筆者のところにも特段の問い合せは入っていない(なお、中国メディアは頻繁に報道)」と指摘した。
■海外勢の関心は低い?
足元で海外投資家の関心が低いことに関して、「2023年4月が任期の黒田総裁率いる日銀の金融政策への影響は少ないと見られていることが最大の理由だろう」と指摘。また、現段階で基本シナリオではないとしながら「もし退陣となった場合、麻生副総理による暫定内閣が有力で、来年9月の自民党総裁選が年内に前倒しになる場合には、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長に加え、菅官義偉房長官が危機管理内閣を標榜しながら出馬するとの見方もあるようだ」とみていた。
■金融政策より財政政策
その上で「いずれの場合も日銀の金融政策よりも財政政策への影響が大きく、現在より緊縮志向が強まることが想定される」と指摘しつつ、「内需低迷から輸入減、貿易収支の改善を通じて本質的には円高的に作用しようが、いずれにせよコロナ危機下では財政緊縮には限度があろう」とし、当面のドル円はリスクオフ的に円高色を強めていくとみていた。(QUICK Market Eyes 片平 正二)
<金融用語>
財政政策とは
財政とは、国が行う経済活動のことである。政府は財政の内容を決定する際に、景気対策などの政策を反映させている。この政策を財政政策という。 国家財政は収入の見込みと、使い途の予算を立てておこなう。国家財政の年間収入のことを「歳入」といい、年間支出のことを「歳出」という。国家財政のうち収入見込みにあたる部分を「一般会計」といい、毎年1月に召集される通常国会で「来年度予算案」として審議される。 財政は、国家規模のお金の出し入れなので、日本の社会全体の経済活動に与える影響は小さくない。そのため、政府は次年度の予算を立てる際は、その時点での日本の経済状況を把握し、対策の必要性があれば、その対策を盛り込んだ予算を立てる。 国家事業を行う財源としては、この一般会計の他に「特別会計」「財政投融資」と呼ばれるものがある。