「Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)」――。かつて米国で力強くスピーチした安倍晋三首相が前週末8月28日に辞意表明し、7年8カ月続いた「アベノミクス」がひと区切りつくことになった。歴史的な長期政権下で値上がりした投資信託をランキングにしてみた。
■中小型株ファンドが上位、リターン1000%超も
国内公募追加型株式投信(ETF、ミリオン型、ブルベア型を除く)を対象に、第2次安倍政権発足前日の2012年12月25日から20年8月28日までのリターン(分配金再投資ベース)が高い順に並べたところ、上位10本はすべてファンドマネジャーが裁量で運用するアクティブ型で、国内の中小型株で運用するファンドが多く入った。同期間の日経平均株価は127%上昇した。
1位は「DIAM新興市場日本株ファンド」(販売停止中)で、プラス1019.5%と断トツだった。国内株式のうち、主に新興市場に上場する株式に投資する。最新月次レポート(7月31日時点)によると7割超を東証マザーズ市場の上場銘柄が占め、業種別では情報・通信業が約6割近い。組み入れ銘柄は116で、組み入れ1位は企業向けセキュリティ-サービスを手掛けるHENNGE(4475)、2位はネット保険のライフネット生命保険(7157)、3位は電子商取引(EC)サイト開設支援のBASE(4477)だった。特にコロナショック以降のパフォーマンスが他のファンドと比べて突出している。
2位は「日本新興株オープン」のプラス514.5%。1位と同じく国内の新興市場に上場する企業の株式に投資する。最新の月次レポート(7月31日時点)では、東証マザーズ市場に49.3%、ジャスダック市場に46.6%投資しており、組み入れ銘柄数は94。日本マクドナルドホールディングス(2702)や精密減速機大手のハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)、作業服大手のワークマン(7564)が組み入れ上位だった。アベノミクス下のリターン3位も「SBI中小型成長株ファンド ジェイネクスト<愛称:jnext>」と、主に国内の中小型株で運用ファンドが続いた。
■中国株ファンドや「ネットウィン」もランクイン
国内の中小型株ファンドが目立つなか、4位には「UBS中国A株ファンド(年1回決算型)<愛称:桃源郷>」がプラス500.1%でランクイン。資金流入が期待される人民元建ての中国本土株式(中国A株)に投資する。最新の月次レポート(7月31日時点)の組み入れ銘柄数は12で、上位は家電大手の美的集団(000333)、空調機器の珠海格力電器(000651)、電子機器メーカーの立訊精密工業(ラックスシェア、002475)だった。
9位には米国株式で運用する「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」が入った。上位10本のうち純資産総額(残高)が5798億円と最も大きい。テクノロジーの発展により恩恵を受ける米国企業の株式に投資し、最新の月次レポート(7月31日時点)では組み入れ銘柄数は38。マイクロソフト(MSFT)、グーグルの親会社アルファベット(GOOG)、アップル(AAPL)などを上位に組み入れている。
■上位ファンド、ファンドマネジャーの力量反映
このように、歴代最長政権下で大きくリターンを上げた10本のうち、国内の中小型株を中心に投資するファンドが大半を占めた。これらの組み入れ銘柄上位を比べても中身はバラバラで、特定の銘柄が好成績につながったわけではない。銘柄を選定したファンドマネジャーのハイレベルな力量がそれぞれの運用成果に表れたといえる。
反対にこの7年8カ月でリターンが大幅なマイナスだったファンドには、コモディティ型(QUICK独自の分類)やトルコ関連、資源国通貨の通貨選択型が目立った。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき、西田玲子)