主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDIは、8月末時点で製造業DIがマイナス38と前月から32ポイント改善した。2013年2月(前月比48ポイント改善)以来の大幅改善となった。
■DIは底打ち基調
これまで、製造業DIと日経平均株価の前年同月比は高い相関を示していた。いち早く株価が上昇したことで直近は製造業DIが大きく劣後する格好となっていたが、2ヶ月連続の改善により乖離が縮小した。4~6月決算を通過し、やや不透明感が後退した。
DIのマイナスは、依然としてアナリスト予想は下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。それでも、新型コロナウイルスの影響を織り込むことで下方修正数が減少傾向にあることで底打ち基調が明確になった点はポジティブと言える。
■「リビジョン・インデックスはマイナス圏で推移」
それでも、今後も改善し続けるかという点においては懐疑的な見方がある。JPモルガン証券は8月20日付リポートで「足もとの企業業績がコンセンサス対比上振れる一方、企業は先行きに対して慎重な姿勢を崩していない」と指摘。会社計画は総じてコンセンサス予想よりも慎重であるとし、「今後はこうした慎重な会社計画にサヤ寄せされる形で、コンセンサス予想は目先で一段の下方修正となる公算が大きい」との見方を示した。
大和証券は8月4日時点で、20年度通期会社計画とQUICKコンセンサス予想がともに利用可能なTOPIX採用企業の当期利益増減率は「コンセンサス予想が会社計画を10%ポイント上回っている」と集計。また、依然として会社計画を開示していない企業も多いことから、「下方修正優勢が継続してリビジョン・インデックスは当面マイナス圏で推移しよう」と見込んだ。
■業績回復シナリオが重要
3月以降、株価指数は短期間での反発を演じた。ただ、ここから先の更なる上昇には、業績改善のシナリオが描けるかどうかがポイントになりそうだ。
なお、製造業DIの内訳を見ると、非鉄や医薬品はアナリストによる上方修正数が増える前に株価が下げ渋る傾向となっている一方、電機や輸送用機器はほぼ過去の相関通りの推移となっている。乖離の大きい銘柄は業績が確りとついてくるか、また相関の強い業種はコロナ後の業績回復シナリオがより重要になろう。
(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。