7月に有料化されたレジ袋。プラスチック製品の使用を控える「脱プラ」は急速に進む。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドも10月から買い物袋は一律20円だ。環境問題への対策は「夢の国」まで巻き込む。
環境にとっても消費者にとっても、そして工夫次第ではメーカー側にもうれしい脱プラ商品が登場した。商品ラベルをまとわないペットボトル「ラベルレスボトル」だ。今回の「Go To ESG」はラベルレスボトルを手がかりに、企業の環境問題への取り組みを紹介する。
■分別の手間なく、ラク
ラベルレスの商品の開発はアサヒ飲料や日本コカ・コーラが積極的だ。プラスチックのリデュース(使用量削減)を目的としている。従来のラベルに代わり、リサイクルマークなど省略できない情報は小さいシールを貼ったり、キャップに記載したりしている。今年4月の省令改正により、ペットボトルにリサイクルマークを直接刻印することで、このシールもいらないラベルレスボトルを販売できるようになった。
2018年5月からラベルレスボトルを販売するアサヒ飲料では、「EC(電子商取引)の台頭などで、ケースで購入する機会がますます増えている。顧客からは環境貢献を喜ぶ声に加え、資源回収時にラベルをはがす手間が省けて『ラク』といった声が届く」(広報部)という。
■ラベルレスをマーケティングに活用
違った角度でラベルレスを展開し始めたのがサントリー食品インターナショナル(サントリーBF)の緑茶飲料「サントリー緑茶 伊右衛門」だ。今年4月、商品のリニューアルを機に、ラベルレスボトルの伊右衛門を数量限定で販売した。ラベルがないと中の飲料の色が消費者にそのまま伝わる。この特徴に目を付け「緑茶本来の鮮やかな緑の水色(すいしょく)を最大限に体感してもらうことを目的にしたマーケティング施策」(広報部)を導入した。
その効果は抜群で、8月下旬には再び数量限定で販売した。ラベルレスにより淹れたての緑茶のような色が目に入り、緑茶をあまり飲まない顧客も呼び込んだ。環境にもやさしい取り組みが売り上げ増加につながっている。
■環境宣言を発信
ラベルレスボトルの商品を多く展開するアサヒ飲料は、プラスチックごみの削減に向けて2019年1月に「容器包装2030」を定めた。2030年までに取り組む内容を決めたもので、ペットボトルやラベル、キャップなどプラスチック製容器包装の全重量の60%を、リサイクルペットや植物由来の素材にする、といった目標を掲げる。ペットボトルが軽くなっているのもこの活動の一環だ。
アサヒ飲料は目標の制定について「事業活動のなかで社会の課題を解決し、社会的価値を創造する」ためと話す。今や企業活動は環境問題への取り組みと切り離せない。企業の成長性をみる投資家にとって、企業の環境活動は無視できない要素になるのは自然な流れと言えそうだ。
☝株価チェック
世界の投資家が注目する環境分野の指標の1つに、英国の非政府組織(NGO)CDPによる評価がある。2019年にアサヒグループホールディングスとサントリーBF、キリンホールディングスの飲料3社は「気候変動」への取り組みで最高ランクの「A」評価を取得した。気候変動でA評価がついたのは、世界の調査対象8000社超のうち上位2%相当の181社のみだ。ESG投資家を中心に資金を呼び込む効果を期待できる。
株価はどう動いたか。各社とも様々な事業を世界で展開していることもあり、値動きにはばらつきがでた。今年に入ると新型コロナウイルスの感染拡大により、業務用ビール類などに強みをもつアサヒGHD株の上値が重くなっている。
※(Go To ESG)ではESG投資に関連した話題を原則月1回配信します