コロナ禍で逆風にさらされていた婚活業界に復活の兆候がみられる。お見合いパーティーなどリアルな出会いの場が激減したことで、緊急事態宣言後は婚活を休止した人は急増したが、足元ではオンラインを主体に活動を再開する動きが活発化しているようだ。また、政府による新婚生活60万円助成も追い風になるとみられ、婚活関連企業のへの注目度が高まるとみられる。
■対象年齢や年収条件を緩和
各種報道によると、内閣府は少子化対策の一環として、新婚世帯の家賃や敷金・礼金、引っ越し代など新生活にかかる費用について、来年度から60万円を上限に補助する方針を固めたもよう。非正規雇用や奨学金返済などに加えて、新型コロナによる年収減など経済的理由で結婚に踏み切れなかった人に対し、現行額から補助金を倍増したうえで、対象年齢や年収条件を緩和することで結婚を後押しする狙いのようだ。
対象は「結婚新生活支援事業」を実施する市区町村に住み、新たに婚姻届を出した夫婦。現行制度は、婚姻日の年齢が夫婦とも34歳以下、世帯年収が約480万円未満などの条件に当てはまれば30万円を上限に補助を受けることができるが、これを年齢の条件を39歳以下に緩和して世帯年収も約540万円未満に拡大する。
内閣府の集計では、同事業を実施しているのは281市町村(7月10日時点)で、東京都を筆頭に大都市圏でほぼ該当地がないことが問題視されている。実施自治体が増えない要因には補助額の半分を自治体が負担となることがあり、内閣府は補助率を3分の2に引き上げる方針のため、今後実施自治体が増える可能性もありそうだ。
厚生労働省が9月17日に発表した2019年人口動態統計(確定数)の概況によると、出生数は前年比5万3161人減の86万5239人と4年連続で減少し、1899年の調査開始以来過去最少を更新。合計特殊出生数は1.36(前年比-0.06pt)で、20~34歳の各階級でいずれも前年より低下したが、35~39歳と40~44歳の第3子以上などで上昇しており、少子化対策で新婚生活支援の対象年齢を引き上げる効果はあると思われる。
■婚活業界に復調気配
逆風にさらされていた婚活業界にも好転の兆候が垣間見える。結婚相談所運営のパートナーエージェント(6181)によれば、緊急事態宣言解除から3カ月経過し、SKE48を起用のスペシャルコラボ動画の効果などで問い合わせ数や来店予約数が確実に増加しているという。今夏では日別の資料請求件数、および入会数が過去最高に達する日もあるなど婚活需要の拡大の兆しがみられるという。
また、ネット広告などを展開するネットマーケティング(6175)は、8月の恋活・婚活マッチングサービス「Omiai(オミアイ)」の新規会員数が13万1000人(前年同月は11万8000人、前月は10万3000人)となり過去最高を更新した。集客プロモーションを強化したことが奏功したとしており、政府の結婚支援を追い風に伸びが続く公算が大きいだろう。
結婚情報サービス運営のIBJ(6071)が8月中旬に発表した2020年6月中間連結決算は、売上高が前年同期比17.9%減の61億3200万円、営業利益は29.4%減の7億6400万円と大幅減収減益となったが、会社計画(売上高58億8700万円、営業利益1億2100万円)を大幅に上回った。新型コロナウイルスの収束時期が見通せないなか、ストック型の結婚相談所ビジネスへのニーズが高まったほか、緊急事態宣言解除後のパーティー参加者数が想定以上に回復したことなどが寄与したという。5月の1Q決算発表時に未定へ変更していた通期予想については、売上高が前期比14.2%減の131億円、営業利益は37.9%減の14億5200万円と大幅減収減益を見込んでいるが、婚活業界の復調気配を背景に業績上振れが期待されそうだ。
(QUICK Market Eyes 本吉亮)